有限会社
日刊板紙段ボール新聞社
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板紙・段ボール産業の総合紙。
紙器・段ボール企業を中心に機械・資材メーカーなどの動向をはじめ、箱を使うユーザーの動きも網羅。各種統計の分析なども充実。
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▼平成28年が終わる。『パッとしない』『数量が伸びない』、顔をあわせればこれが挨拶代りの一年間だった。それでもごく一部を除けば水面下には『沈まないで済んだ』。原紙は『上がる前に戻った』なんて声も聞かれるが、表面上は未だにそう変わっていない。但し指定紙中心に激しい戦いの真っ最中。製品も弱含み、特にシートは春先から怪しい状態だったが、特値が横行しつつある。
▼段メーカーもボックスも抱える問題に取り組み少しずつ改善した。例えば納期、ある会社は『翌日配送は〇%、当日なら〇〇%掛かります』と文書で通達、その後は足を運び、受け入れない会社とは一部の取引を止めた。ロットにしても『少しでもまとめて』とお願いに歩いた会社もある。『量は減っても収益は高まり、従業員も喜んでいる』と言う。それでも絞る雑巾は乾いてきたのが実態だ。
▼大手段メーカーの設備投資。専業トップの驚異的な工場新設に押され一貫系も新工場やリニューアルが続く。『うちが火を付けたから』とはS社長だが、段ボール工場が強化・合理化される事は産業全体にとってプラスに働く。『大手は色々手が打てる』とは中小の言い分だけど、ただ見ているだけでは〝座して死を待つ〟と同じ。自分で出来る事から積極的に動かなくてはジリ貧になる。平成29年はどんな年になるのか。少しでも良い年にしたい。 (山)
『段ボール需要がこれ以上伸びない中で顧客の要求は多様化・細分化し、そのスピードも格段に速くなっている。1社で出来る事は限られており、無理して打って出てもマイナスに傾く事が多い。段メーカー200にボックス千数百社、現状のままで10年先に存続できているのだろうか』『ユーザーも大きな会社が幅を利かせるようになってきた』、地方の段ボール会社C相談役がこんな話をした。
段メーカーは大手を中心に合併・吸収を繰り返し事業拡大してきた。だが『中小になると家業であり、どうしても子や孫に残したい』(C相談役)、のも当然の事。それでも『頼みの綱の量が減ってくれば、そんな事を言っていられない時期が来る』と見ている。『1年先が読めない』ほど不透明感が増し、その一方で『設備投資は顧客の要求に応えるために絶対必要』なのだから、まとまった資金もいる。『何か手を打たなければ』、これが最近頭から離れないそうだ。
絶えず議論される合併、あるいは新会社にアライアンス。仲がいい仲間が『やってみよう』で、出来るもんじゃない。東京と地方、営業と製造、電気と食品(納入先)など等、今までも色々な組み合わせや取り組みが模索されてきたが、具体的な成功事例はまだまだ少ない。量が落ちていない今のうちに次の一手、配送や物流含めて大胆な発想の転換が求められている。 (山)
▼運転手不足に悩む地方の段ボール工場、『50万平米販売するなら、10万を5社に売るより50万を1社に』と言う。得意先や近隣同業との関係からどこまで出来るか未知数だが『この方向』だ。しかもボックスの方でもこの考えに乗る気の社長もいる。当然、まとまればそれなりの価格になるのだから、『仕入先を絞るメリットはある』、のだろう。気になるのは小さな会社。運転手不足が進めば『その量では引き取りに…』なんて事もあり得るのか。運転手不足によってボックス大小の差が、また開くようでは困る。
▼『ユーザーよりも段メーカー対策の方が大変』とは中堅ボックス。競合する得意先に安値を出すのは必ず段メーカーで、それも仕入れているシート価格では対応できない提示価格。量不足でも沈んでいないのは、ケース価格をある程度は守ってきたからで、これまで壊してしまったら…。前には強力なユーザー、後ろの段メーカーは仲間のはずだが、そうでは無くなった?。片や、昔『うちには5台のコルゲータがある』と話したボックス経営者がいたが、戦略上これはこれで立派な事だ。一部地域は今も同じようなものらしく、こっちは強力なスポンサーか。
▼10月の大手段メーカー生産量、△グループのみ前年比を僅かに超えたが、他は軒並み前年割れ。中小も同様で秋需の盛り上がりもいまいちか。 (山)
▼10月21日付けの日本経済新聞に、財務省と国税庁は酒類の過度な安売りを防ぐため、『原価と販管費の合計を下回る価格で販売を繰り返した場合、違反業者の免許を取り消せるようにする』とあった。安売り業者の台頭で経営に苦しむ中小の酒販売店を守る狙いだ。これを読んだA社長『夢想ですが』と前置きしながら『段ボールも日経市況を原価とし、大手段メーカーは原価と販管費を割って販売したら罰則、なんてルールが…』と言う。これが冗談では済まないぐらいなのが今の現状。少しでも良くしたいところだが一部大手の動きは逆方向だ。
▼少し前に調整幅と言うか原紙価格がバラけてきた感じがすると書いたが、大手板紙メーカーの中でも売り急ぐ会社があると聞く。それでも『仕入先は絶対に変えない』段メーカーがあると思えば、動かすところも。どちらが会社にとってプラスかはトップの判断であり、最近は経営者の器量、腕も問われるようになっている。『厳しい会社もあるようだ』こんな噂話も金融筋から出ているそうで、与信管理は小さなボックスだけの話では無くなっている?
▼某流通が一部で話題にあがる。取扱量の移動があったことは確かだが、原因は人絡みか価格面でのことか。他の流通でも動きはあるようで原紙、段メーカー同様に差は開いていく?。なお10月末原紙在庫、増えに増えて53万㌧超え。 (山)
▼『需要は伸びる→設備投資→少しぐらい安く売っても。このパターンが忘れられないんだ』とは某地区の中堅段メーカー。伸びが頭打ちになった今でも、『増える生産量、導入した高速製箱機を前提にケースのコストを決める会社が多い』と言う。だからなのか、需要の落ち込みが少し続くと、へばってしまう。ある広域向けケースなど『どうしてあの値段になるか不思議』とし、『原紙の協力金を考慮しても赤字になる仕事に価値はあるのだろうか』。小さな仕事も減っており、シート販売先であるボックスも『毎年、数社が廃業する』そうだ。産業全体が疲弊しきらないうちに、どうにかしたいところだが…。
▼『湧いて出て来る関東とは量が元々違う』、こんな話が以前から囁かれていた関西地区だが、関東の同業者は、『中部・関西の方が良さそうな感じ』と言う。もっとも全国的に中小は数量不足にあるものの、『増えたら増えたで取りあいが始まる』と段メーカーは話す。『奪い合えば足りないと感じるし、同じ産業で切磋琢磨する仲間を裏切る行為が問題な事に気が付いていない』。飲料の比率を落とすメーカーもみられるが、今までが激しい消耗戦、我慢比べだっただけに、中身が良くなる事は確かだ。だいたい需要が増える事を前提に、設備や箱作りをしているから、少し足りないと人の物まで手が出てしまうのだ。 (山)
▼入社当時(昭和54年)、『段ボールだけやっていれば、まず潰れる事は無い』、色んな取材先で聞かされた。『倒産した会社は別な何かをしたから』で、真面目に段ボールをやっていれば間違いはない、と。確かにそうだったし、『今でも通じる』と思いたいところだ。さて、大手ボックスに対するシート販売、たとえ引き取りにしても異常な価格を耳にする。紙代にも満たないその値段では、〝増強される製箱機は段メーカーのプレゼント〟、こう揶揄されても仕方がない。しかし大手ボックスが潤った会社ばかりとは限らない。売るだけでなく与信管理をきちんとしないと後が大変だ。
▼8月の段ボール生産量、『お盆前はまあまあだったが明けてから悪い』と関東地区の中小段メーカーは言う。前年並みならまだいい方で、数量が上がらない会社も多い。荒らされ採算悪化の原因になったシート販売、極力減らした事も影響する。そんな中、大手段メーカーは全社、対前年比100%を超えた。『いつの間にか小さな取引先にも入り込まれている』そうで、特に一貫△社は前年悪すぎた本体は別にしても、子会社2社含めて110以上稼いでいる。『ここまで差が付くと、別の国の話みたい』とは親しい経営者だが、まだまだ勢いは止まりそうにない。段ボールはある程度の量は必要だが、中小各社は惑わされず見極めが肝心。 (山)