板紙・段ボールから印刷紙器までを網羅した専門新聞社です

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有限会社
日刊板紙段ボール新聞社

東京都文京区湯島4-6-11
湯島ハイタウンA-509号
TEL.03-5689-0121
FAX.03-5689-0120
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板紙・段ボール産業の総合紙。
紙器・段ボール企業を中心に機械・資材メーカーなどの動向をはじめ、箱を使うユーザーの動きも網羅。各種統計の分析なども充実。

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日​刊​板​紙​段​ボ​ー​ル​新​聞​社​
 

過去のインタビュー【1】

 

佐野成人・王子チヨダコンテナー社長 12月17日付

佐野成人・王子チヨダコンテナー社長 12月17日付
 
 業績が上向き出した王子チヨダコンテナー、「常に工場再編を行っていることが大きい」と佐野成人社長は見る。数量が厳しくとも、適正価格の維持を第一に、業界秩序を保つ姿勢は石田前社長と全く変わらない。来年は関連会社の再編を視野に入れる。中長期的スタンスとしては、海外での事業運営の経験を元に、通常段ボール以外の製品分野強化を掲げる。佐野社長に話を聞いた。

●厳しい時期での社長就任、特に今年は数量の減少と値下げがありました。これを踏まえて現状は
 昨年、一昨年の値上げは、価格優先で真っ当に取り組んだ。その過程で、数量の落ち込みはあったが、ここ半年で、ようやく業界平均に近づいた。ただ、これ以上増やそうとすれば、価格に影響が出る可能性があり、慎重に対処していきたい。
 価格は、過去の経緯を踏まえ業界として秩序が保たれている。これを当社が先行して壊すことはない。 
●量を伸ばしている他社もあります。何らかの対応は
 現在の所、それはないと考えている。同業大手の落ち込みが少ないのは、ユーザー構成の違いから。加工食品や青果物が多い所は、急激な落ち込みはなかったが、当社は電気や自動車関連が多く、影響が大きかった。
 ●この先も、量の伸びは期待できません。価格に対する不安は
 重油と古紙の動静、時に古紙コストによる。原燃料価格は先行き不透明だと言わざるを得ない。よって今、値下げ競争に突入すれば、大変なことになるというのが業界の共通認識だろう。そのことが値下げに対する抑止力になっている。
●全段連の下期需要予想は前年並みです
 対前年比102〜103%とみている。仮に前年並みとしても、07年比でみると85%程度。少し回復すると見ても07年比で90%に届くかどうか。仮に08年比90%程度であったら、日本経済は相当深刻な状態だ。これが判明するのが11月以降。原紙は不況の影響から昨年10月から落ち込んだが、段ボールは11月からだった。これが一巡する11月の生産量に注目している。
●貴社の内容は
 現状のまま推移すれば、それなりの収益に落ち着くだろう。常に工場再編を行っていることが大きい。09年もコルゲータは3台(高槻・群馬・広島)停止した。3年前に遡れば8台停止している。
 ●来年も引き続き再編を進めていきますか
 今年末から来年にかけては、連結対象の関連会社を中心に再編する。直轄工場を続けて再編すると、従業員の転出先確保など難しい面がある。
 また、「60歳定年」というが実際は2、3年雇用を継続するのが、世の習いだ。そう考えると、団塊の世代のピークである昭和23、24年生まれの人が第一線から退くのは2011年。今慌てて、直轄工場を閉鎖して、人を余らす必要はない。この2年間は慎重にやっていく。また、関連会社の再編も従業員の職場確保が前提だ。
●他社は大型工場を建てています。大型拠点工場の計画は
 巨艦主義だけでは勝ち残れない。600〜700万平米で、適正な利益を出せる程度が理想。コルゲータの生産性が高ければ2直で対応できる量のレベルが、私の考える大型工場だ。
 ●そのスタンスで利益が出ない小型工場を閉鎖することになりますか
 それは違う。広島工場も利益頭だったが閉鎖した。高槻も黒字だった。利益が出ない工場を閉鎖する発想ではない。ロケーションや顧客など総合的な判断が基本。大型工場の近隣に、200万平米クラスの工場があっても、閉鎖するとは限らない。つくば工場の近くに200万平米程度の埼玉工場があるが、これを閉鎖する発想は現在の所ない。役割分担がある。
 ●輸入原紙が注目されています
 ベトナムに赴任していた当時は、現地の工場はほとんど輸入紙で賄っていた。価格メリットはあるが、為替やデリバリに加え、最も厄介なのは資金繰り。
 特に直買する場合、出港の際に代金を払い、船便で1カ月半かけて運搬し、それから製造してやっと回収となる。堅固な財務体質でないと資金繰りが苦しくなるだろう。
 私自身も量が少ない時には認識していなかったが、300万平米を超えた途端に資金繰りが大変になった。
 ●輸入原紙が増加すれば、価格が引きずられる懸念があります。特に大手ユーザーが直接採用した場合、影響も大きい
 輸入原紙の価格設定は一朝にして変わる。今は確かに安いかもしれない。ただ、仮に中国の製紙メーカーが、古紙の購入を一気に増大させ、OCC(米国産古紙)価格が上昇したら、途端に高騰する恐れがある。見極めを誤ったら、大変なことになる。
 ●それ程脅威に感じていないと
 全く脅威でないと言えば嘘になる。当社も一貫メーカーなので、否定的な見解しかできないが、例えば、低坪量化にしても、国内では今になって注目されているが、中国やインドネシアでは既に当たり前だ。    
 日本の製紙産業は良し悪しはともかく、保守的な面があり、現状維持が基本だ。よって市場がそのような原紙を求めた時に柔軟な対応ができなければ、遅れをとることになる。その辺が一番気になる。低坪量品がユーザー指定となった場合にも対応できる体制づくりは準備しておく必要があろう。
 ●プラコンなど他素材への置き換えに対する脅威は
 「脱段ボール」の動きは盛んに言われているが、逆に他の素材から紙への変更はまだまだ進むと考えている。当社では、木製パレットから紙パレットへの切り替えが進むとの観測のもと、紙パレット事業を担っていた関連会社を12月末で閉鎖し、今後は全工場でその事業を展開していく。
 現在本社の営業本部は、営業担当よりも顧客対応や新規開発などCS担当が多い。花が咲くには時間を要するだろうが、様々な計画が進行している。
 ●将来的に段ボール以外の分野をどの程度まで増やす計画ですか
 具体的な数字は出していない。ただ、ベトナムでの経験が大きい。ベトナム工場(ホーチミン)がある南部は商業都市で通常の段ボールの需要が、伸びる市場である。かつての日本と似ている。
 一方、北のハイフォン工場は市場規模が小さく、ホーチミン程需要がない。そこで片段や美粧ケースなど関連する分野も含めた幅広い展開を行った。現在月200万平米程度だが、半分は通常の段ボール以外の製品だ。日本の市場も徐々にそのようになるのではないかと考える。
 ●紙器や美粧段ボールメーカーの買収は計画していますか
 国内では今のところは考えていないが、中国の段ボールメーカーと技術提携する。元々先方からの依頼だが、日本にはない立派な紙器工場を持っており、興味を持った。技術者を派遣し段ボールの技術指導をするとともに、紙器の製造を委託することで、将来的には段ボールとの同時展開も可能だ。また、インドの市場調査も開始した。こちらも進出するにしても自前で工場を建てることは考えておらず、現地企業と組む形になるだろう。
 国内は盤石になるようなコストダウンを継続すると同時に、機があれば逸しないように海外進出を図っていく方針だ。
 ●設備投資は
 2010年は老朽化対策のための定期更新とともに、戦略設備の導入を進める。これは本社の政策として実行する。
 貼合では蒸気圧を下げるシステムの採用を考えている。日本のコルゲータは過熱(オーバーヒーティング)気味なので、熱量を下げ高速運転が可能な貼合化を進めたい。製函は、AP(自動平盤打抜機)の改造を計画している。上給紙や横ズレの見当補正が可能な機構に改造する。
 また、ベトナムにマイケルマンコーターを移設する。材質の低グレートを補い、高付加価値化を達成するためにコーティング技術は必要だ。まずは現地で試験導入し、その後日本での展開を考える。防錆や防水のためのコーティングと、中しんに強化剤を塗布して強化しんにするコーティング。両方向への展開を目指す。他にも具体的には言えないが、機械メーカーマターではなく、当社技術部門主導で従来にない開発を進めたい。
 

小林康太・甲府紙器専務 11月17日付

小林康太・甲府紙器専務 11月17日付
 

 甲府紙器?(小林明社長、山梨県)は、各地で生産相互委託を行うなど積極的な展開を見せている。小林康太専務は「過去2年の価格修正への取り組みを通じて、疑心暗鬼が払拭され、結束できた点が大きい」と述べ、延長線上に合併や共同購入会社設立など「中小の再編モデル」を描く。景気後退から1年経過した現状や輸入原紙、CFへの対応など、小林専務に聞いた。

 ●景気後退から1年が経過しました。現状は
 食品は、冷夏など気候要因に左右された面はあったが、大きな落ち込みはない。工業製品は、前年比で2割程度落ちた時期もあったが、夏以降は回復傾向にある。
 全体で見ると、最も落ち込んだ時で前年比15%減程度。比較的恵まれている方だろう。景気後退の影響は、実質半年といったところだ。
 ●需要予測では、下期は前年並みと予想しています
 大手がけん引している面もあるが、明るい兆しが見えてきた。地域差はあり、山梨地区は比較的安定している。市場規模は小さいが、商売し易い。価格も原紙からの調整以降は落ち着いている。
 ●輸入原紙が注目されています
 価格を優先し、採用することはできない。また、デリバリの問題もある。現状、不確定要素が多いものよりも、信頼が置ける国産原紙を選択する。
 懸念すべきは、輸入原紙を口実に価格を下げる動きだ。景気後退で、空腹なのはどこも一緒。過去2年、同じ目標の下、進んできたことを大事にしなければならない。
 ●経営していく上で、重視していることは
 お客様に対し、目に見えない部分、ソフト面のサービスで還元していく。段ボールケース自体は、他社と大きな違いを出すのは難しい。ではどこで違いを出すのか。営業力も含めた会社の姿勢だ。特に現在のような時勢だと、会社の姿勢が評価に直結する。安く売るだけではお客様は付いてこない時代だ。従業員には「オネスト(正直な)カンパニーになろう」と常々言っている。
 今年、情報セキュリティのISOを取得した。製造業では前例の少ない試みだが、多くの反響をいただき、お客様との大きなパイプになっている。これも目には見えない部分だが、着実に芽が出てきている。   
 教育の一環として、幹部社員を中心に、外部機関での研修を開始した。外の空気を吸うことは、勉強になるし、まだまだ我々の業界が恵まれていることも実感できる。得たものを持ち帰り、新たな力に繋げてもらいたい。
 また、当社は中途入社の従業員も少なくない。これもソフト面の充実を図る要因のひとつである。なぜ従業員の出入りが少なくないのか、サラリーの問題もあるだろうが、それ以外の問題が大きい気がする。愛社精神を育むための取り組みが必要だ。
 生産面では、コスト意識の徹底を図っている。一枚くらいロスが出ても良いではなく、一枚一枚がコストに繋がる。お客様が使用するという意識を高めてもらいたい。そのためにもやはり教育。この会社に勤めて良かったというものが後々、大きなものに繋がっていく。
 ●新規事業はお考えですか
 包装以外のグループ会社もあり、それらを通じた新規事業は考えているが、基本は段ボール。
 段ボール製○○は様々あるが、コア事業に育つかと考えると、過去の実績を見ても難しい。裏を返せば段ボール自体が如何に成熟した存在かということ。ケース・シート販売を維持していくことが先決だ。
 ●設備については
 製箱は、今年フレキソダイカッタを増設し、ひと段落ついた。コルゲータはドライエンドのバッカーなどリニューアルする予定。Cフルートのカセットも計画している。
 ●CFは今後のキーポイントになりますか
 CFは、耐圧強度を維持したまま、高い積載効率を実現できるなど、お客様に還元できる点は多い。ただ、その側面だけを強調していて良いのだろうか。段ボール業界として、CFに取り組む本質的な部分は何か。大義名分でなく、本音の部分を共有し合わないと結果として疑心暗鬼に陥ってしまう。
 ●と言いますと
 端的に言うとCFを理由に価格を下げて拡販するような動きを危惧している。AFからBFに仕様変更しても通常、価格に違いはないのに、CFだと安い、では明らかに矛盾する。本当に業界を挙げて取り組むのならば、移行期間を設け、一斉にCFに統一する必要があったのではないか。皆さんそこの所はあまり口に出して言わないが、もっと喧々諤々やっても良いのではないか。
 段メーカーの若手経営者の集まりに参加しているが、大仰に言えば、我々の世代が未来の段ボール業界を救う世代である。大手の同世代と交流を持つ事ができればとの思いはある。30・40代がどんどん表に出て、発言していくことが必要だ。働きざかりの我々が声を大にしていかないと変化は起きない。
 ●今後の段ボール業界どのように見ていますか
 川上の原紙サイドに限って見れば、ここ10年の再編で、ある程度固まった。次はコルゲート専業メーカーだ。中小同士の合併の可能性も十分あるだろう。
 ●オーナー会社同士の合併は難しい面があります
 再編に直結するものではないが現在、当社では全国各地のメーカーとアライアンスを組み、相互生産委託を実施している。過去2年の価格修正で、大きな結束を構築できたことが、この動きを加速させてくれた。今後、関係が持続すれば、更に踏み込んだ展開も見えてくるだろう。
 ●統合・合併へと踏み出すためのキーポイントは
 原紙を踏まえた資材の共同購買が分水嶺となる。将来的に中小同士の再編のモデルケースを作る動きに加わることができればと考えている。持ち株会社を持つのもひとつの手だろう。利益ベースは各社が独立採算でやればよい。成功すれば段ボール業界のひとつの大きな指針となるのではないか。

 

野原将彦タチバナ産業社長 10月7日付

野原将彦タチバナ産業社長 10月7日付
 
  ここ数年、食品物流加工事業参入や、段ボールケース販売会社買収など積極的に事業の幅を広げる?タチバナ産業。段ボール消費の減少に歯止めがかからず厳しさが増す中、同社ではこれらの展開が功を奏している。ボックスメーカーが生き残っていくためには「ボックスはボックスの打開策があるはず」「厳しい環境を十分に見極めた上で何ができるかが、大きな要素となる」と述べる野原将彦社長に話を聞いた。

  ●ボックスメーカーの現状いかがですか
 前年比維持ならば、十分健闘といえる状況だ。ただしボックスの仕事を段メーカーも取りに来ることから、仕事不足が浮き彫りになっている。現時点で当社は、直接大きな影響を受けていないが、先行きに対する不安定さや不透明感はある。
 この問題を、全て段メーカーの責任にすれば、解決するわけではない。ボックスはボックスの打開策があるはず。それを見つけ、実行に移せるか否かが分岐点となる。
 ●シートやケース価格は崩れていませんか
 今の所、崩れていないが、一部では安値の競り込みの話も聞く。今後仕事のない状態が続くと値崩れまではいかずとも、我慢しきれない所で、パイの奪い合い、無益な競争が激化する可能性はある。
 ●多くが「価格は死守」との認識を持っていますが一方では量の減少に歯止めがかかりません
 経済環境のせいばかりにしていても仕方がない。厳しい環境を十分見極めた上で、前向きなアクションができるかが、生き残っていくための大きな要素だ。
 ●業態を拡げようと食品物流加工事業への参入など大きな展開を見せています
 まず物流を内製化したロジスティックセンターを開設。その延長上で、食品物流加工事業に参入した。舵取りの変更ではなく、仕事の幅を広げ、相乗効果を期待する姿勢を明確に打ち出した。
 ●今年は、段ボール販売会社を吸収しました
 食品物流加工事業参入から、それほど経過しておらず、早い気もしたが、こういったことはタイミングと縁。苦労もあるが、管理部門だけになっていた浅草に、営業開発部門を再び置くなど対応、軌道に乗ってきた。
 ●新規事業は浮き袋的要素になっていますか
 それは間違いない。逆にないことを考えると、ぞっとする。その場合、人も設備も過剰な状態に陥り、縮小均衡に向け、対策を講じねばならなかっただろう。
 ●次なるアクションは
 物流加工分野や営業拠点の拡大はひと段落ついた。次は設備だ。更新時期を迎えたものに加え、現状に合ったマシンの導入も必要である。春日部工場は稼動して5年経過し、当時導入した設備でも現状と合わなければ更新する。将来の見込みがつくならば、今は設備投資には良いタイミング。ただ、先行きが不透明なだけに、どこから手をつけるかの見極めは重要になる。
 加えて、人。人員の拡充と教育が求められる。毎年新卒者を定期雇用できる会社にしていく。その後次の手を考えたい。
 ●以前、A式に変わり抜き貼りなど高付加価値分野を強化すると話していました。設備もその方向性に沿う形で計画していますか
 A式、抜きもの両分野とも一新する。単なる量の拡大ではなく、現状、印刷や抜きなど加工内容によっては既存設備では足りない部分がでてきている。?品質向上??能力アップ?を視野に入れながら設備を選定する。 
 生産効率や資金繰りなど様々な点を考慮すれば、ある程度A式もないと、いくら抜きの加工賃が良いといっても、景気の悪い状況では、高コストのケースの方が落ち込む。リスク分散の点からもある程度量は必要だ。 
 ●何をしたら良いかわからないという同世代の経営者も少なくない。求められる経営者像は
 私も修行中の身。断定できる立場にはないが、非常に難しい局面ではある。創業者や先代を引き継ぎ、はじめから明確なビジョンを持ち、行動できる後継者は少ない。まずは流れを見ながら徐々に軌道修正していくことが多いと思う。
 実際、周辺環境は途轍もなく早く変化している。それを見極め、先手を打ち、成果を出すのは並大抵な苦労ではなく、相当な適性が必要である。私自身が今取組んでいることも、結果的に良かったかどうかの答えは、3年先、5年先になると思う。安定的な成長を目指す所からはじめ、そこからどう肉付けしていけば良いかというのが最初にあった。
 新規事業を展開する上で、あまり本業と遠いことをやると、軌道に乗るまでが大変だろう。周辺業務からはじめ、相乗効果を狙う方が結果的に収益へと繋がる。右肩上がりの時代ならば、たまたま打った手が予想を超えて成功することもあるだろうが、今は経済がシュリンクしており、消費者の財布の紐も固い。加えて、サポートしてくれる人のネットワークがないと当社クラスの会社では難しい。
 ●段ボール産業、まだまだ明るいとお考えですか
 金融業界から転身し、実際に取組んでみると、非常に面白い業種であった。多くの方々とお付き合いでき、物の動きを裏から見られる。問題は自己満足に終わらずに、どのように収益を上げていくのかという部分。そこに工夫と努力が必要だ。
 以前から、段ボールから他の包装材(プラコン等)への変換との話はあるが、実際は思うほど進んでいない。むしろ物流体系の変化や宅配ビジネスの拡大など、チャンスは増えている。
 ただ、少子高齢化などマーケットの縮小は大きな問題として残る。その辺を見極めながら次の手を打てれば、ビジネスとしての面白みはある。従来の方式に拘らなければ、様々な手法があるだろう。
 昨年のリーマン・ショックまでは他所が厳しくても当社は右肩上がりを信じて疑わなかったが、環境の変化には抗えない部分は往々にしてあると痛感した。といってあまり慎重になりすぎても難しい。慎重且つ大胆な姿勢が求められる。
 

神谷兼弘・中央紙器工業社長 9月7日付

神谷兼弘・中央紙器工業社長 9月7日付
 
  経済不況の影響をモロに受け大きく生産量を減らす中部圏。その中でも5%台の営業利益率をキープする中央紙器工業は秀でた開発・提案力で知られている。同社に激震が走ったのが07年秋、リーマンショックの1年前。全生産量の30%強を占める主力商品がキャップシート包装に切り替わるのだ。神谷兼弘社長に対策や今後の方向性を聞いた。

   ●中部圏の段ボール需要、大きく減少しています。現状いかがですか
 当社も例外なく、昨年
 

栗原正雄・栗原紙材社長 7月7日付

栗原正雄・栗原紙材社長 7月7日付
 
 今年に入り、月別統計で過去最高を記録するなど古紙輸出量が急増している。これを受け、古紙問屋の在庫量も昨年末の過剰状態から一気に適正へと動いた。「国内製紙メーカーの操短」と「中国からの強い需要」が要因とする栗原紙材?(東京都荒川区)の栗原正雄社長(全国製紙原料商工組合連合会理事長)に、今後の輸出価格及び量の動向を聞いた。


 ●古紙輸出量が過去最高を更新しています
 1月は25万7914?(前年比96・5%)、2月45万6742?(同163・9%)、3月51万7538?(同166・5%)、4月56万3666?(同167・4%)と推移している。
 合計180万?あまりで、月平均45万?輸出したことになる。全原連の予測、月30万?をベースに比べると、4カ月で60万?も輸出超過だ。5月も50万?は超えるだろう。そうなると75万?の超過。仮に6〜12月が予想通り月30万?でも、年間450万?近くなってしまう。
 ●要因は
 需要減を受けて国内製紙メーカーが操短し、古紙の発注量を絞り在庫を控えた。昨年末のピーク時から5月末まででメーカー在庫が92万6千?から80万1千?へと13万?近く減少した。当初は、過剰在庫であったが、使用した分を補完せず、購入量を絞り込み過ぎたと言える。
 問屋サイドからしてみたら、ヤードがパンクしてしまう、在庫を適正量に戻さなければという心理が働き、採算割れしているにも関らず、輸出へと向った。
 これに急激な内需振興策へと舵を切った中国からの強い引きも重なった。米国が昨秋以降、コストが合わず古紙回収が離散状態で、当てにできない。その分を日本からの輸入で補完した。
 中国の紙・板紙生産量は横ばい。さすがに昨年末は落ち込んだが、今年に入り、回復している。中国はあらゆる原材料で安価な内に在庫を積み増しており、資源の買いあさり傾向にある。中国の製紙大手は、在庫を2カ月分持ちたいと考えている。現状は1カ月分の1社40万?程度だから更に倍の量は確保したいようだ。
 ●この現状を踏まえた古紙価格の動向は
 現時点で問屋サイドでは、ほぼ過剰在庫を解消した。逆に6月以降もこのペースで輸出を続けると、9月末で在庫が底を着く。現時点では、基本的には輸出する必要はない。よって輸出量は6月から減少するだろう。
 国内価格は、段ボール古紙?15円(?あたり1万5千円)。4月から下げる予定もあったが、今回の輸出ドライブで中止した。輸出価格は6月に入り急上昇した。段ボール、新聞は前月比20%増の?1万円程度、雑誌が?8千円程度。適正在庫になったことで、価格に強さが戻った。
 ただ、輸出価格が急上昇したとはいえ、依然として1万円。日本から購入したいのであれば、国内価格?1万5千円を意識した価格を出さなければ量を確保できない。
 7月は、6月の急上昇をけん制する動きで若干弱含むかもしれない。ただ、それ以降、中国は需要期に突入するので、強含みで推移する。特に中秋節での月餅消費に伴い、板紙の消費が最大になる。月餅の箱は全て白板。原料の新聞・雑誌古紙は秋に向って間違いなく上がる。
 どの程度の価格になるかは、欧米の古紙がどの程度市場に出るかによる。現状は、あまり発生しておらず、日本への依存はしばらく続く。秋以降は、再び輸出価格が国内価格を上回ることも考えられる。少なくとも同等にはなる。
 国内需要は、全原連では09年の製紙メーカーの古紙使用量を前年比92%と予想している。現状は予想より低調だが、年間通して考えると、7・8月は富士・岳南排水路の清掃による排水流入禁止や、お盆で大きな動きはないが、9月以降、タイトな状態に向うのではないか。
 ●都市部を中心に中国の古紙回収率も向上したと言われていますが
 高値ならば回収するが、安ければ回収しないということが顕著だ。事実、価格が崩れた昨秋以降、ヤードを完全閉鎖してしまっている問屋も多い。社会的責任という部分での集団回収やボランティア体制なども構築されておらず、メーカーも安定供給先と見ていないというのが現実だ。
 ●再び、昨秋以前のような高値のレベルに戻るのでしょうか
 6月の輸出価格上昇を受けて、国内の仕入れ価格を上方修正した問屋もあるが、時期尚早だろう。
 価格が上昇しているといっても、国際経済が回復していない現状で、早晩、昨秋以前の状況に戻ることはない。
 

三澤清利・特種東海HD社長 6月17日付

三澤清利・特種東海HD社長 6月17日付
 
 特種東海ホールディングスの社長に三澤清利副社長が就任した。東海パルプと特種製紙の合併からちょうど2年のタイミングで「苦労もあったが、大きな2つの特色を手に入れた」と振り返る。今後もグループ内での再編成を含め更なる効率化を徹底していくと強調する三澤社長に、需要低迷下での戦略や海外への事業展開、古紙配合率問題など聞いた。

●抱負を
HD設立から2年経過し、一体化と安定化が進み、相乗効果を上げることができている。この良い流れを維持するとともに、今後1年以内にグループの再編を含めた体制見直しを視野に、更なる合併効果を狙う。
●性質の異なる2社の合併でした
東海パルプは段ボール原紙を主体に、エネルギーバランス、マテリアルバランスを考慮し生産することで、大量に良い物を安く提供している。一方、特種製紙は、世の中にない製品の開発を第一に、値段は二の次という意識で生産しており、両社間には大きなギャップがあった。私も当初、迷いや戸惑いがあり、白紙撤回との考えが脳裏をよぎったこともあったが、今では大きな「特色」を2つ持っていると捉えている。
当HDは、東海パルプと特種製紙、関連会社13社で構成され、これまでに様々な相乗効果を得ている。例えば物の考え方、市況の見方も変わり、従来のようにシェアや価格だけではなく、変化する状況への対応力などが確実に構築されている。
●具体的な再編の構想は
まずは、各社でのコスト削減などコンパクト化を進める。その上で、より効率化を図る手段としてグループ内の再編もあり得る。ただ、突拍子もないことを行う気はない。
●現在、紙の需要が低迷し、各社減産傾向にありますが
非常に厳しい経済状況だ。これが続くと、過当競争に陥り、業界再編に向けた駆け引きが激化する可能性はある。我々は、外部からの影響を受けない独立した企業グループの確立を目指しており、これを保持する。
2年前、王子製紙と特殊紙事業での戦略的な資本・業務提携を結んだことで「特種東海、王子グループ入りか」という噂が広がった。持株比率は1%程度なのだから、グループ入りのはずがないのだが。我々は常に、友好的なことができるのであればやりたいとフラットに考えている。どこに対しても同じスタンスだ。
●板紙事業での展開は
板紙も現在、大幅な減産に入っている。板紙を含め産業用紙は、市況の影響を受け易く、状況によって大幅な増産となる場合もあるが、今後は多少景気が回復してもかつての水準には戻らないだろう。同様のケースとして、分かり易い例が自動車産業。都内だけ見ても明らかに台数が減っている。一時期はガソリンの高騰が影響していたが、今はそうではない。一般ユーザーが、「無くても暮らせる。今まで無駄があった」と気付いたのではないか。紙パルプ業界もシェア争い等から脱却し、コスト削減など市場の実体に見合った対策へ方向転換すべきだろう。
東海パルプと特種製紙は、市況に大きく影響される産業紙と、独自性が生命線の特殊紙の両方に触れることで、世の中の動きをいち早く感じ取る力と、動じずにじっくり構える力の両方を得ることができた。今までなら、すぐに売らなければと焦ってしまう場面でも、冷静に無理な判断を止め、見極めようという意識になっている。
●販売戦略は
特殊紙だけでなく板紙についても、私が様々な所で発言しアピールする。また、将来的にはアジア圏を中心とした海外のマーケットにも活路を見出していく。現在も中国に駐在員を置くなど調査を行っているが、現地の需要はだいぶ復調しており、年半ば頃までには上昇基調に転じるようだ。
北京などの都市部では特殊紙のニーズが高い。中性紙と調湿紙を合わせた「保護紙」は、古文書などの劣化や酸化、虫食い等を防止するため重宝されているが、中国では保存のノウハウがまだ定着していないようで、当社の製品に興味を持つ人は多い。インターネットで情報を配信しているので、世界中から問合せや注文を頂いている。
●昨年は古紙配合率問題もありました。再発防止に向けた取り組みは
現在ほぼ解決しているが、製品によっては補償が残っている。長年、環境配慮商品の開発に取り組んできて、純粋に良い物を作ろうという情熱や創意工夫に偽りはなく、弁明したい気持ちもあったが、生産責任があったことは事実だ。社内でも改めてコンプライアンス体制を定め、生産指令書から確認システムまですべて配合率が実態に即するよう改善した。もう2度と起こらない。
社会に与えた影響は想像以上に大きく、現在でもまだ払拭はされていない。あの一件で市場は変わってしまった。環境意識が高まる一方で、消費者の拒否反応、トラウマは明らかだ。特に、特殊用紙や印刷用紙では影響が色濃く、売上げは3割以上落ち込んだままである。
環境は今後も社会全体で取り組むべき重要なテーマである。当グループは、南アルプスの山林を約2万5000?、7500万坪保有している。山は生き物であるため、倒木の除去や、間伐など必要な整備を実施してきた。環境事業は、もちろんビジネスなのだが同時に我々は自然への畏怖や敬意、感謝の気持ちを実感している。その思いは今後もずっと変わらない。これは我々の原点であり、後輩たちに残せる最大の財産である。
 

関俊秀・レンゴー副社長 5月17日付

関俊秀・レンゴー副社長 5月17日付
 

4月から始まった製品値下げ。各社ともに生産量を落とす中でも価格への意識は高く、想定内で進んでいる。日頃から「売価を1%上げれば営業利益は14%上がる」、「量を伸ばしても営業利益を増やすことは不可能と思っていい」と強調する関俊秀レンゴー副社長に、同社の現状及び進むCフルート化について聞いた。


  ●一連の値下げ、発表時期について色々な意見もありましたが、懸念されたようなこともなく進んでいます。レンゴーの状況は
 昨年10月、原紙の10円値上げを受け、シート・ケースへの転嫁を開始した。シートは10月分から決着、ケースについても個別(時期、幅)に回答を得た。総じてシート、ケースともに新価格体系へ移行できた、と判断している。
 今回、原紙の5円の値下げを発表、実行しているが、シートは4月分から?5円相当分以内に収まった。ケースは値上げ時同様にそれぞれ時期、幅ともに個別対応している。?5円相当分以内に収れんされるものと認識している。
 ●大手、ナショナルユーザーは
 大手は支給原紙が多い。支給原紙先は原紙の?5円相当分で決着した。それ以上のオーバーランはない。値上げが遅れたユーザーは、4月以降の時期で同様のスタンスで交渉中。
 あの時期(2月24日)の発表については、いろいろ議論はあったが、概ね成功だったと思う。ユーザーからも「透明性がある」と評価いただいた。個々の問題はあるにしても全体、トータルの判断は良かったと思う。
 ●他を取材しても値崩れすることなく同じような感じです。各社の姿勢がこの2、3年で大きく変わったからでしょうか
 そう感じる。06、07、08年と連続して値上げを実施。特に07年の加工賃を前面に出した修正は画期的だった。08年にしても“原紙代分の値上げは当たり前”と受け止め?10円分を転嫁、出来れば変動費もプラスアルファしようとがんばった。意識は大きく変わっている。
 ●原紙がいくら変動しても加工賃さえしっかり確保すれば、段ボールは健全です
 みなさんよくわかっている。昔の値上げは逆だった。原紙上昇分さえ転嫁できずに加工賃を削ってきた。利益を吐き出すなど、苦い経験を踏まえた学習効果が表れている。
 ●ただ、これだけ量が落ちてくると、もう少し機械を回したくなる段メーカーも出てくるのでは
 色々な所でマッキンゼーの1%プライス理論を話している。これは売価を1%上げるとその会社の営業利益が14%上がる、というもの。会社の内容によって多少異なるにしても、だいたい当てはまる理論である。
 もし売価を変えずに量で補おうとした場合は、4%伸ばさなければならない。しかも4%伸ばすには売価が一定なことはありえない。10%近く伸ばさないと、14%の営業利益は確保できない計算だ。
 今の段ボール業界のように全体の量が減少している中で、量を追えば、当然売価は下がる。量を伸ばして営業利益を増やすことは不可能と思っていい。“量”は他に与える影響も大きく、必ず自分に降りかかってくる。ユーザーの揺さぶりはあるにしても、加工賃をきちんと確保することが大切である。
 ●量を追うごく一部の点が面に広がる心配は
 たとえあったとしても、大きく影響はしない。地域の段メーカーはその地域では力もあるが、仮に量を追ったとしても広がるとは思わない。名前の出る会社はいつも同じ。みなさん冷静に見ている。
 ●段ボール生産量ですが、当初予測の125億平米と見ていますか
 日本全体で生産減が起こっているが底を打ったのではないか。V字回復はないにしても、徐々に在庫が減って生産は上がってくる。明るさも見えてきた。125億平米は、1−3月はほぼ予想値通りになっており、いい数字だと思う。
 ●最近Cフルートについてよく耳にします
 ユーザーさんも環境を重視し、Cフルートへの関心はより高まっている。ユーザー名は公表できないが、著名大手がCフルートの採用を決めた。今まで、レンゴーとA社がケースを納入していた場合、“両社ができなければCフルートには…”と躊躇したユーザーさんも、“できないのならば全量、レンゴーへ”と変化している。特に貼り合わせ頻度の高い工場は切り替えの進む速度も速い。
 ●Cフルート、レンゴーだけが突出しています
 レンゴーは社長からのトップダウンで強力に進めてきた。会社のポリシー、方針の違いでしょう。
 ●数量の対比は
 目標をAフルートからCフルートへの転換比率で立て推進している。
 一番進んでいる工場で50%、Aフルートの半分がCフルートに変わった。遅れている工場で10%台。Cフルート化が進んでいるものは、米菓、スナックやティッシュなど軽いものだったが、青果物の一部、洗剤・化粧品へも浸透してきた。若干遅れているが、ほぼ目標どおり進んでいる。
 ●Cフルートを採用後、Aフルートに戻った例は
 無いとは言えないがごく僅か。ほとんど戻らない。 

 

石田隆・王子チヨダコンテナー社長 3月17日付

石田隆・王子チヨダコンテナー社長 3月17日付
 
 板紙各社が4月から段ボール原紙を?5円値下げする。折しも未曾有の不況の影響で、段ボールメーカーは軒並み生産量を減らしており、その対応に注目が集まる。王子チヨダコンテナーの石田隆社長は「シートもケースも取引条件は個別。原紙と同時に、無条件で値下げするということはない」と述べ、時期・下げ幅ともに、昨年の値上げを基準として交渉すべきだと強調する。今回の値下げがうまく軟着陸することができれば、段ボールにとって「新たなルールを構築する契機となる」と期待を込めた。(インタビューは2月25日)


 ●レンゴーが先月25日、4月から原紙を?5円、シート及びケースは原紙値下がり相当分値下げすると発表しました
 「いよいよその時が来た」ということですね。これまでユーザーの皆様に原燃料アップ分の価格転嫁をお願いしてきたわけですから、原燃料が市況で下がる、あるいは下げる努力をして下がるということが起き、それが定着するという見通しが立てば、そのコストメリットをユーザーの皆様に還元するのは当然です。
 王子製紙グループでも同じようなことを考えていましたし、時間の問題だと思っていましたので、今回のレンゴーさんの発表内容自体に違和感はありません。
 ●発表の時期について、色々な意見があるようですが
 それはあるでしょうね。私にもあります。値下げというのは価格崩壊のリスクを伴いますから、売り手側としては当然色々心配します。ましてや今は未曾有の不況下で、段ボールメーカーも一様に空腹の状態です。加えて期末月は、ユーザーさんの揺さぶりが強くなる時でもあります。自分は動かなくても他が動くのではないか、という疑心暗鬼も起きるでしょう。今回の発表で、段ボール業界が1ヶ月間のリスクを抱えることになったのは事実だと思います。
 しかし今更そんなことを言っていても事態が良くなる訳ではありません。原紙は4月までは下がらないのですから、右往左往する必要はないのです。第一右往左往したくても原資がない筈ですから。
 ●一部にシェアを守るためにいち早く発表したという意見もありますが
 それは無いでしょう。色々な意見はあるでしょうが、先回りして根拠もないことを想像しても仕方がないことですし、何ひとつプラスにはならないでしょう。これでレンゴーさんが量を増やしただとか、どこか取ったということが現実に起きれば、問題は大きくなるでしょうが、そんなことをなさるとは思いませんし、そもそもそのようなつもりなら、発表などしないでしょう。
 ●シート、ケースの値下げ時期と下げ幅ですが、原紙が昨年の値上げ分の半分なら、シートも半分なのかとの見方もあります
 シートもケースも取引条件は個別です。原紙と同時に、無条件で値下げするということにはなりません。取引条件に応じて、個別に適切な対応をさせていただきたいと思っています。 
 そもそも全てのユーザーさんで、10月から要求通り、シート価格が上がったわけではありません。ケースについても同様で、値上げの時期が遅れた、幅も届いていないというユーザーさんに対してまでも、4月から5円相当分値下げするというのはアンフェアでしょう。
 当社としては、例えば3カ月値上げが遅れたユーザーさんには値下げ時期も3カ月遅らせていただきたい、原紙値上げ分を満額転嫁して頂けなかったユーザーさんにはそれを考慮した下げ幅で対応させていただきたいと考えています。例えば、6円相当しか上がらなかったユーザーさんに対し、その半分の3円相当分を値下げするのではなく、上げきれなかった4円相当分を今回完全にカバーされるようにして、1円相当分の値下げとさせていただくというのが我々の言い値になります。そこから先は交渉です。
 ●上がる時は大変な時間を要しますが、下がる時は瞬時に下がり、泥沼にはまるのが、かつての段ボール業界です
 業界内のベクトルが合うことが大切です。私にできることは、当社の考えを明確に表明し、各社が行動なさる際の材料を提供することです。これは大手メーカーとしての責任だと考えています。
 過去2回の値上げは、ベクトルが合いました。量が大幅に減少している現状で、不安がないと言うのは嘘になりますが、今回も同様の結果となることを願っています。
 後は各社が同様の方針をお取りになるのか、量を追いかけて有利な条件をお出しになるのか。基本は自由競争ですから、始まってみなければわかりません。
 ●ユーザーの反応は
 当然ユーザーさんにはユーザーさんの言い値があります。値上げよりも、値下げの方が難しいと言いますが、そうかもしれません。ただ、前々回の値上げで加工賃の修正が叶い、昨年秋の値上げでは、凸凹はありますが、全体としては維持できたわけです。今回の値下げが加工賃に食い込んでしまうようですと、段ボール業界にとって自殺行為でしょう。
 ●年末以降の生産量はいかがですか
 大変厳しいです。11月が前年比85%、12月が同91%、1月は同89%、2月は82%程度になると思われます。3月は需要期ですし、若干は回復するのではと期待していましたが、厳しい状況が続きそうです。むしろ期末に向けてもう一段ユーザーさん側が在庫を絞ることも考えられます。
 ●となれば、なお更、価格を大事にしなければなりません
 段ボール産業は中小が多く、自分だけが量を追っても大した影響はないという気持ちがどこかにあるかもしれませんが、絶対にそれだけでは済みません。
 当社を含め大手と言われるところは全国展開しており、全体量は多いですが、地域レベルで見ますと、決して突出した存在ではありません。中小の影響力というのは、ご自身が思っている程小さくないのです。誰かが何かすると地域全体に影響が及びます。そしてそれが近隣にも広がっていくものです。     
 昨年の秋の値上げ以降、シートの特値を把握していますが、当社グループとしては売り負けを覚悟で対応を止めています。随分と量は落としましたが、拡がりは点で収まっています。もちろん、点の数は増えていますが、あくまでも点で、シート市況に直結するものではありません。
 これは大多数のメーカーのベクトルが合い、節度を持って行動している現れでしょう。それに例え市況を形成する程の勢いで特値対応をした所で、取れる量には限界があるとの共通認識があるのだろうと思います。
 決してベクトルを合わせ、理不尽な利益を取ろうというわけではありません。逆に理不尽な利益を取ろうとすると、ベクトルは合わないものです。ここ2年あまり、ベクトルが合っているというのは、業界全体が最低限の適正利益を求めて動いたからです。ぜひ今回も、その姿勢を崩さずに、うまく軟着陸できれば良いですし、できないはずはないと信じています。
 なかなか楽はさせてもらえないものですね。値上げ、値上げと来て、値下げです。ただ、ある意味では今回の値下げが新たなルールを構築する契機となるかもしれません。「段ボール価格のフォーミュラ化」とでも言いましょうか、原紙がこうなったら、段ボールはこうなるというようなルールが確立されるならば、それは決して悪いことではないでしょうね。
 

佐光恵蔵・クラウンパッケージ社長 2月17日付

佐光恵蔵・クラウンパッケージ社長 2月17日付
 
?クラウン・パッケージがマイクロフルートを開発してから、20年以上が経過した。当初のF段に加え、98年にはダイレクトオフセット印刷に適したG段も開発、マイクロフルート市場のすそ野も拡大し順調に生産量を伸ばしている。現在世界的な景気後退の影響で消費の低迷が叫ばれているが佐光恵蔵社長は「こういう時こそお客様は包装の見直しをするチャンスの時期である」とし、2年後の生産量倍増を目指すと強気の姿勢を崩さない。佐光社長に、マイクロ段の現状と、新製品や設備投資を踏まえた今後の展開について聞いた。

●マイクロフルートは以前に増して多分野で普及が進んでいるように見受けられます
 契機となったのはやはり00年の容器包装リサイクル法の施行。それ以降、マイクロフルートが広く認知され始めた。我々の営業力と言うよりも、大手段ボールメーカーが参入し、たくさんアナウンスしてくれたおかげである。
 また、他社の参入で、相見積もりを取ることも可能になり、1社のみの生産では地震など災害の際に危機管理ができないというお客様の不安を払拭できたことも大きい。
 ここ2・3年、生産量は毎年2〜3割近く伸びている。菓子箱やファーストフードなど食品容器以外に、薬品や化粧品、弱電など様々な分野で普及した。
 まだまだ量は少ないがすそ野が広がったことで生産量は増加している。今後はその底上げをする。ただ、折角すそ野を広げてもお客様の生産拠点が海外に移転するという逆風もある。それについては新しいユーザー、別の業界を開拓することで補っていく。
 ●どういった包装資材からマイクロフルートへの転換が進んでいますか
 化成品からが一番多く、一部単紙やE段、B段からも替わった。我々の立場からすると、E段からの転換は極力避けてきたが、お客様の要望であるならば、止むなしと見ている。
 マイクロフルートの位置づけは、E段と単紙の中間。E段と単紙は似ているようで実は差は大きく、その間を埋める素材として提供している。ある程度の中装箱であれば、E段でも単紙でも使えたが、「帯に短し、タスキに長し」だった。そこにマイクロフルートが登場したことで、段ボールの緩衝性と強度、単紙の美粧性を併せ持つマイクロフルートによる二者選択から、三者選択となった。
 ●ユーザーはマイクロフルートのどういった点にメリットを感じているのでしょうか
 紙の使用量の削減、ゴミの減量化、リサイクル推進という環境面は大前提。なお且つ、経済面にもメリットを感じてもらっている。
 エコロジーとエコノミーは両立しなくてはならない。安くても環境に悪いものは勿論、環境に良くとも高いものにはメリットを感じてもらえない。環境に良く、価格も妥協できる範囲で安いというものにこそメリットを感じていただけると思っている。
 ●G段のダイレクトオフセット印刷(Gプリント)に対し、印刷紙器メーカーの抵抗はなかったですか
 昔気質の印刷紙器メーカーの抵抗は少なくなかった。ただ、時代背景が変化し、環境への配慮なしにはパッケージが売れ難くなると敏感に察知したメーカー、特に2代目、3代目へと世代交代した会社は、チャレンジ精神で採用してくれた。その中で想像以上に良い物が刷れるという評価をいただけた。
 ダイレクトオフセットは、美粧性に加え、合紙と比べ、納期・工程数ともに削減できるので、エンドユーザーに対するアピール度も高く、販売力も上がる。そういう面で採用が進んだ。
 ただ、一昨年あたりよりG段合紙も積極的に提案している。箔押や、プレスコート、ホログラムなど製品によっては合紙の方が良い場合がある。
 ダイレクトオフセットは今後も更にレベルアップしていくが、我々が考えている以上にユーザーニーズがどんどん先を走っているので、選択肢を増やすということも重要。ダイレクトオフセット自体は増えており、生産能力的にも合紙での対応が必要という側面もある。
 ●F段(段高0・6?)と後発のG段(0・5?)の生産比率は
 生産ベースでは昨年、月によってはF段よりG段の比率が高くなっており、今年は逆転するだろう。多くのお客様にとってはマイクロフルートイコールG段だ。F段も伸びているが、G段の伸びの方が大きい。
 ●F段、G段の分野別でのすみ分けは
 開発当初はF段しかなかったので、食品から弱電まで全てF段であった。ところが、ダイレクトオフセット印刷が可能なG段が登場したことで、弱電などはG段にシフトしている。
 食品容器は、軽量化や使用後の容器の減容性(ゴミの減量化)を優先するので、中しんの段繰率が少ないF段が依然多い。当社の生産設備は現在、G段の両面貼合は全ての工場で可能。F段は大拠点に集約させている。
 ●マイクロフルートのシート売りに関して、05年の段階で「4割程度。将来的には8割程度に」と仰っていました。現状は
 段ボールメーカーとして、自社で加工することも必要だが、シート売りが一番マーケットが広がる。ただ、シートを購入いただける新規顧客は増えているものの、販売先の加工メーカーの数そのものが減少しており、05年とさほど変化していない。今後も増やす意向はあるが、ケース売りが増えており、現状4割を切っている。
●新たな設備投資については
 印刷分野の設備は、ここ数年強化し、ほぼ満足いくところまで来た。あとは構造設計に関わる部分。マイクロフルートは構造設計も独特のノウハウが必要だ。単紙やE段にできない形状や構造があるので、その辺りを追求している。具体的に言うと、貼り工程などの充実を図っている。
 ●構造設計の観点から新製品「バリットボックス」も注目されています
 3年前の東京パックで、市場調査も含め参考出展したが評判で、充実させていく。問題はどうやってマーケットに乗せるかだ。専用のグルアを導入して2年経ち、ようやく方向性が見えてきた。
 バリットボックスはPOPの機能を持ったボックスでありながら、商品の売り方をお客様に提案する機能もあわせて持っている。バリットボックスは輸送箱兼陳列機能を持っている新しいタイプの箱である。棚に置いても、積み上げても良い。高い美粧性を持ちながら店舗での労力が最小限ですむことが一番のポイントで、従来のパッケージに不足していた部分ではないかと思う。これと似た箱としてジッパーによって開封し陳列するパッケージがあるが、開封作業の労力が削減されず、見栄えも悪い。
 欧米の店舗では既に広く普及している。日本のように店舗スタッフがケースを開梱して、棚に商品をひとつずつ詰めていく作業はほとんどしない。輸送箱を剥しそのまま陳列棚に置くという売り方が通常で、日本もいずれそうなるだろうと期待している。
 ●07年にロジテック事業部を立ち上げました。狙いは
 極端に言うと、箱はどこからでも買える。ものづくり、配送、保管と全て一括でできるサービスを期待するお客様は多い。グループに運送会社があり、そこのノウハウと当社のノウハウを融合させることで事業がスタートした。現在はコーヒーの豆を挽くところからパッケージングまでの仕事を請け負っている。ただ、課題は繁閑の差が激しいこと。人海戦術的な面が強いので、工場運営としては難しい面もある。
 自社でノウハウを蓄積している大規模ユーザーに対しては我々の入る余地は少ないが、キャンペーン商品やイレギュラー商品については利用していただけるケースもある。
 ●環境対応の観点からパームヤシカサを利用した紙も開発しました
 製紙メーカーではなく、パッケージメーカーとしてのクラウン・パッケージが開発したもので、食品容器から電気製品のパッケージまで、どんなものにも使用できる。原料のパームヤシカサは、年間を通じて大量に採れる。パームヤシ自体は食用油やマーガリンなどの原料となる。油を採取した後のヤシカサは埋立処分されていたが、それを紙に利用する。
 さらに、パームヤシカサからパルプを取り出す際、ヤシカサを燃やして得た蒸気でヤシカサの油分を洗い流したり、蒸気でタービンを回して発電を行ってその電力でヤシカサの繊維を抽出するマシンを稼動させたりしている、この点も環境に良い。お客様にアピールできれば、どんな分野でも使用できるエコロジーな素材である。
 ●昨年10月からの値上げについては
 率直に言って製紙メーカーの強固な値上げに関しては納得できない点は多い。原材料が弱含んできたタイミングで、なぜ値上げかということはある。
 ただ、上がってしまった以上は前向きに捉えて、交渉を進めている。シートは比較的順調にご理解いただけたが、ケースに関しては難色を示されるお客様も多い。
 これだけ円高で、輸入品が安くなっている中で、なぜ紙だけが上がるのかというお客様からの疑問の声はある。現に化成品は下がっており、今我慢すれば、値上げせずに済むという見方をしているユーザーも少なくない。ただ、当面は下がらないという見方で、値上げ交渉をしている。ケースに関しては昨年12月時点で件数ベース8割が済んだ。残りも根気よくお願いしていく。
 ●最後に今後の展開と目標を教えてください
 今までのパッケージメーカーはトータルパッケージを目指していたと思う。何でもできるというのが売りだったが、これからは専門分野に特化しないと生き残っていけない。我々が生き残るにはマイクロフルートしかない。今迄以上に生産技術と販売力を増強していく。
 2年後にマイクロフルートの生産量を倍にする。十分可能な数字だ。現在、景気は後退しており、テレビやデジタルカメラなどの高級品は当分伸びないだろう。そうなると食品分野。食品は不況に強い。元来当社は食品業界のウェイトは高い。そのノウハウを生かして拡販していく。
 景気が後退しているからといってマイナスばかり考えずに、こういう時こそお客様は包装の見直しを行うという前向きな気持ちでピンチをチャンスにしていきたい。
 

栗原正雄・栗原紙材社長 09年1月27日付

栗原正雄・栗原紙材社長 09年1月27日付
 
昨年10月、古紙の国際価格が大幅に下落した。これを受け、関東製紙原料直納商工組合は11月、12月の古紙輸出を中止した。ただ、その一方で国内段ボール古紙価格は、現在のところ10月以前と同様の建値で取引されている。古紙直納問屋・栗原紙材?(東京都荒川区)の栗原正雄社長(全国製紙原料商工組合連合会理事長)に、国際価格の下落要因や輸出中止の理由、今後の国内価格の動向などについて聞いた。


 ●昨年10月中旬以降国際価格が大幅に下落しました。要因は
 きっかけは米国。年間消費の35%あまりをクリスマス需要が占める。例年それに備え、あらゆる商品で在庫を積み上げるが、景気後退でその需要がほぼ吹き飛んだ。
 これに伴い、米国の製紙メーカーが操短を行った。日本と異なり、仮に10工場あって2割削減となると、完全に2工場停止する体制だ。そうなると工場周辺の古紙は投売りに近い状態になってしまい、下落した。
 これが当然中国にも波及した。需要が大幅に減少すると見て、欧米からの古紙輸入を突如ストップ。LC(信用状)がかかっているにも拘わらず、輸送中の古紙まで受け取らない、どうしても販売したいなら半値にしろ、と言い出した。10月に入り、ナインドラゴンズやリー&マンは操業率3割。一気に7割減の生産体制を敷いたことで、在庫が必要なくなった。
 10月中旬には、毎日?当り10?程度下落し、最終的には70?程度まで落ち込んだ。これでは供給先にとってはタダのようなものだ。 
 利益が出ないので、米国の中西部では、古紙回収自体、逆有償になってしまっている。輸出が成立しているカルフォルニア州でも買取り価格は?10〜20?。それでは古紙の回収業は成立しない。
 欧米諸国や中国ではリサイクルシステムの維持を最優先にしておらず、古紙を扱うことで経費が嵩むとなったら、他のごみと同様に廃棄する。例えば、英国では、マテリアルリサイクル(素材回収)だけでなく、サーマルリサイクル(熱回収)も認められており、その判断は、採算に乗るかどうかである。
 ただ、あまりにも古紙が発生しないと大手は減産していても、中国には何千といった中小製紙メーカーがあり、それらの企業は在庫を持っていない。さすがに12月初旬現在、5割戻しており、ナインドラゴンズも日本での買付けを再開した。
 ●国内段ボール古紙は、プレミアム価格はなくなったとはいえ、?1万8千円と、10月以降も価格が維持されています
 欧米などと違い日本の古紙リサイクルは、自治体の補助金が整備され、古紙再生促進センターも機能しており、需給両業界で安定化に向けて取組んでいる。リサイクルが円滑に機能しないと環境問題になる。ゴミの45%は紙であり、国際マーケットに合わせ価格を下げると、リサイクルシステムそのものが崩壊してしまう。
 従来、国内古紙価格は国際マーケットに連動していない。
 ●需要先である製紙メーカーも古紙価格維持については共通の認識です
 そうだ。国内製紙メーカーも古紙のリサイクルシステムを守ることが重要だと言っている。原紙価格を維持するためにも必要である。古紙、製紙どちらかが崩れると共倒れになってしまう。
 ただ、国内で必要な古紙より月に30万?は、回収が多い。適正在庫を保つため、10月以降も、継続して輸出している。
 ●個々の企業は輸出を継続している中、関東製紙原料直納商工組合(関東商組)は11月、12月の古紙輸出の入札を中止しました
 それには明確な理由がある。前述したように、日本の古紙回収システムを守るため。日本は単純に商売だけで動いているわけではないということを世界に対して示す意味合いがある。関東商組が輸出する量は30万?のうち、4500?と少量だが、入札翌日には中国や東南アジアに価格が広まる程、影響力が強い。
 ●2割といっても損失は少なくないのでは
 仕入れ価格が?1万円として、5千円で輸出しているとなると採算がとれないことになるが、国内、輸出一括で、仕入れ価格を構成している。
 現状段ボール古紙?5千円で輸出し、国内は1万8千円で販売しているとすると、差は1万3千円。輸出は2割であることを考慮すると、全体では2600円下がった計算になる。そうなると1万6千円弱で販売していることになる。これで採算が取れる仕入れ価格にしている。そう考えると微減の範疇で、1年前の価格だと考えれば良い。だから余剰分は安い価格でも輸出し、一方では国内価格は維持することで事業を継続している。
 ●国内古紙の動向も含め、今年の見通しについては
 1月、2月は古紙の非発生期で、大きな動きはないと思うが、4月以降、発生期に入った時点で、国際マーケットの採算割れが続いているとなると難しい局面となる。国内古紙価格も影響を受ける可能性がある。
 中国に関しては、クリスマス需要は振るわなかったが、旧正月による国内需要や、減少したとはいえ依然として米国への輸出はある。旧正月後に在庫調整が済んでいる可能性もある。また大規模な経済対策を実施し、内需拡大を図るようだ。今が底であると考えると、再び上昇する可能性は大いにある。成長率も8%を保つという。紙はGDPと連動するので、回復するかもしれない。逆に中国がこのままでは、世界的に更なる経済の悪化を招くことになる。
 

関俊秀・レンゴー専務 08年12月17日付

関俊秀・レンゴー専務 08年12月17日付
 
段ボール製品値上げがほぼ終了した。最大手・レンゴーも11月前半までで7割強のユーザーから満足する回答を得ている。昨年につづく価格改定を乗り切り、段ボール各社の姿勢は変わった。「1番大切なのが価格であることを意識しだした」と話す同社の関俊秀専務に、今後の見通しを含めて聞いた。

   ●今日(11月19日)現在の製品値上げ進捗状況は
 14日にまとめたデータでは、約9割のユーザーから回答頂き、全体の7割以上で決定した。
 ●決まった時期、額は満足する数字ですか
 期日、上げ幅ともにほぼ要求に近い。
 シートは10月1日から8円。一部で若干ずれ込んだが、10月中旬にはほとんど8円で決着した。ケースについても、工場が担当する地場ユーザーは件数も多いが8割以上で決着、残りも近いうちに決まるだろう。
 広域ユーザーは、7割強から回答を得ている。今現在も時期・幅を詰めている最中だ。
 ●交渉はいつまで続けますか
 地場ユーザーは11月15日までに目処をつける方針を出しており、広域ユーザーは11月末までに決める方向で進めている。
 ●2年続けての値上げでした。感触は
 出だしは遅かったものの、9月後半から10月にかけて一気に進んだ。支給原紙が期日に同額上がったことも大きなインパクトになった。板紙メーカーが一般と支給の価格差など、いわゆる「ダブルスタンダード」とならないことを意識して強力に進めた結果、段ボール製品を後押しした。
 昨年の加工賃改定も学習効果になっている。初めて原紙より先に加工賃をお願いしたが、「やれば出来る」と自信につながった。
 今回は原紙代プラス変動費もお願いした。これについても概ね理解して頂けた。
 ●値上げに対する姿勢が変わったと
 そう思う。1番大切なのは加工賃。これを意識しだした。今までは原紙が上がる度にその上昇分も上げられず、結果として加工賃を減らしてきた。量でカバーできた時代は別にして、現在はそうではない。「大事なのは価格」に変わった。
 ●レンゴーの生産量と業界平均を比較してどうですか
 1〜9月で見ると月毎の凸凹はあるが累計では殆ど変わらない。
 ●段ボール生産量は今年からマイナスに転じそうです
 量はこれ以上伸びることがない。また量だけを集めても意味がないことを勉強した。今あるものを大事にするしかなく、それが価格だ。
 ●製品が上がったことで、段ボール離れにつながる可能性は
 それほど心配していない。プラコンや折り畳み容器への動きは一部で見られるが、ヨーロッパでは一度変わっても、段ボールに戻った事例もある。環境に優しく、コスト的に見ても段ボールの方がメリットある。
 ●古紙や重油高騰を理由に原紙は上昇しましたが、その原燃料が下がり始めました。段ボールへの影響など考えられますか
 この1カ月で急変した。中国がどうなるか。様々な情報も入ってくるが、バタバタ慌てず冷静に見極めなければならない。中国の伸びがゼロになることもないだろう。
 国内の古紙価格も連動していない。大坪社長(レンゴー)が言うように「古紙と原紙と段ボールは三位一体」、切っても切れない関係である。古紙も原紙価格も安定して欲しい。三位一体でいかなければならない。
 ユーザーの一部で調整を期待する声は出ているが、ただこれも今すぐのことではない。
 ●このまま下がり続ければ、業界内でも来年4月以降の調整は避けられない、と見る人もいます。仮に調整となった場合、値崩れしないためにも調整分を公表するなど、何らかの対策も必要では
 原紙担当ではないが、段ボールサイドから見ても3月までは考えられない。4月以降、どこかで線引きの話が出てくる可能性はある。ただ、下がったと言っても電力などは上がってくる。積み上げてきたコストの先行きを、よく見極めなければならないと思う。
 ●段ボール製品の線引きについては
 段ボールではありえない。段ボールはシートもケースも全部個別の交渉。要求した内容も違えば頂いた回答も違う。個々の判断になる。
 ●郡山工場が全面リニューアルします。能力的にどれぐらいアップしますか
 現在の工場は狭くて限界。新工場は現状より能力は増えるが、北関東の工場の負荷調整の役割も担っている。
 

安藤温・王子板紙社長 08年11月17日付

安藤温・王子板紙社長 08年11月17日付
 
板紙メーカーは、昨年の価格改定以降、原材料高騰によるコストアップに耐えてきただけに「10月1日実施、10円は絶対に崩せないとの思いを強くもって交渉した」と話す王子板紙の安藤温社長。一歩も引かずに指定原紙も含め、「目標は達成出来た」と振り返る。ただ今後、仮需や世界的な景気後退の影響で、需要の減少が予想される中、各社それに対応した生産計画が求められると強調する。ここに来て古紙の国際価格が急落した件については、「国内価格もこれに連動して大きく値が動くとは考えていない」との見解を示した。


●原紙値上げは、予定通り10月1日出荷分、?10円以上で決着しました
 昨年の製品値上げが原紙代プラス加工賃で大幅となり需要家との交渉も難航しただけに、原紙値上げの時期は間を置かざるを得ませんでした。コストアップの幅10円以上と被った期間の長さから、10月1日実施10円は絶対崩せないとの思いを強く持って交渉を進め、段ボールメーカーも理解してくれました。大半の段ボールメーカーからは8月中にご了解をいただいた。シェアで60%を超える一貫メーカーが共通の思いで進むので、強い推進力があり、残る40%の専業段ボールメーカーも同調していただけた。
 ●今回、指定原紙の値上げ動向が焦点となりました
 全体の約15%を占める指定紙について、時期や上げ幅で、段ボールメーカーとの間のダブルスタンダードをなくすように努力すべきだという意見が、昨年の値上げが終わった頃から、非常に強くなっていました。年が明けて、ユーザー6社の共同調達の話が出てきた時にも、受けるべきではないという議論などがあり、尚更注目されましたね。
 段ボールメーカーの資材担当はプロなので原紙価格の上げ下げを自分で的確に判断出来ます。一方、エンドユーザーの資材は様々な扱い資材の一つが段ボールですから同様の判断は難しく、今迄は段ボール業界の結果がまず示され、新聞の客観記事で裏打ちされて初めて最終判断となっていました。そうなるとどうしても1カ月程度は遅れてしまっていました。
 幅についても差があるのではと疑問を持たれますが、これは1回に1円の差でも何度も重なれば大きな差になり、公平さを無くします。当社はグループ売り、一般売り、指定紙とバランスしていますので、指定原紙が安いということはなく販売させていただいています。
 ●広域ユーザー含めて同時期、同額ですね
 そうです。今回に関しては、新聞報道が出ない段階でも、段ボールメーカーが10月1日からの値上げを了承したことが確認出来ましたら、同時期、同額の値上げを認めてくださいと、全エンドユーザーにお願いしました。特に大手飲料や全農、6社の共同調達は、注目されていましたが、10月1日を必達目標に進めてきました。目標は達成出来ました。
 ●交渉時期と前後して、重油や古紙が下がり出していました。これに対するユーザーの反応は
 値上げを打ち出したのは6月18日、天井と比べると下がってきている状況ではありましたが、現在ほど下がってはいませんでした。これほど世界的に金融不安になり、景気が極端に悪化するとは想定していませんでしたが、我々はこれまで、原燃料コストの上昇を半年以上耐えてきました。今後、原燃料が下落し続けるかどうかはわかりませんし、再び上昇するかもしれません。交渉においては、短期的な価格の変動で、ピークよりも下がったからと言って、要求した上げ幅についてエンドユーザーが特段、執着されることはありませんでした。
 値上げ決着後に世界的な景気後退で中国の古紙事情が急変。米国、欧州からの輸入価格が大幅に下がり、補完的な日本からの輸入は全く必要のない状態で価格はつかないも同然です。この状態は短期で在庫調整が進み解決するのか、需要が減り長期化するのか、予測が出来ません。しかし、中国は減速と言っても10%前後の成長はするようですので、余り慌てるべきではないと思います。
 輸出古紙は当面、量、価格共に厳しいとしても、国内古紙がそれに連動し値が大きく動くとは考えていません。
 ●今後の生産の見通しについては
 段ボール生産量は4〜8月は前年比98%台。9月は100%を超えましたが、10月以降の見通しも98%程度です。個人的には、これも希望的観測が含まれた数字で、実態はもっと悪いと予想しています。
 昨年は製品値上げの仮需で、一昨年と比べ10〜12月が特に良かったことに加え、秋から冬にかけては天候も安定し、農作物も動きました。それと比較しての、今年ですから、まずは2%程度落として通常の年ということになります。そこを基準に、今回の景気後退と物価上昇による買い控えの影響が予想されます。昨年同様、製品値上げによる仮需が、前倒しで10〜12月は出てくるかもしれませんが、来年1〜3月で、その反動があるでしょう。10〜3月でみれば、前年比96%程度と見ていた方が良いと思います。
 当社では、7〜9月に仮需で随分在庫が移動しました。9月だけでも本来あるべき需要と比べ15%程度余計に動きました。7・8月分を合わせると、20%程度は既に段ボール業界に移っていることになります。そうすると先に動いたものを引いたのが、今後必要な原紙の生産量になります。在庫は9月で29万?台ですが、12月の在庫もせいぜい32万?程度に保っておかないと、1月はオフ需要期に入ってきます。加えて、景気が悪い状態が続いていると想定しておくべきです。
 それらを考慮すると、昨年のマシン稼動率は93%でしたが1割程度悪くなっても仕方がないと想定し、生産計画を組まないと、需給が緩んでしまうでしょう。
 製紙各社は長い間苦しい思いをしてきたので、再び赤字操業に戻りたくないというのが共通の思いです。現在もマシン稼動率は多くのメーカーが91、2%程度です。無論、自由競争が基本ではありますが、必要以上の競争にならないような形を維持しておいた方がお互いに良いでしょう。
 ●段ボール業界どのようにみえますか
 これまでは、極端に言いますと、悪い条件でも辛抱して仕事をしていたら、2・3年先、仕事量が増えてそれを享受できるかもしれないので仕方がないという商売を随分続けてきました。ですが、もうそれは通用しないことは皆さん実感として持っています。量が基本的に伸びない中、個別商売ごとの採算性を重視していかなければならないでしょう。いくら量があっても不採算な仕事は改善する努力をしなければなりません。
 昨年の値上げでも、王子チヨダコンテナーの経営トップが、「量に頼る時代ではない。量が伸びない中で、一つ一つの仕事で適正な価格をとっていかなければならない。それができていない仕事は他のユーザーのシワ寄せになるので、お断りする」という方針を徹底しました。それで収益を確実に改善出来たし、同業に対しても、そういう姿勢をはっきり示しており、良い影響力を生んでいます。確実に段ボール業界は変わってきています。
 

石田隆・王子チヨダコンテナー社長 08年7月27日付

石田隆・王子チヨダコンテナー社長 08年7月27日付
 
段ボール製品の価格改定に向けそれぞれ動き出した。王子チヨダコンテナーも大手段メーカーとして、?数量など他の何を犠牲にしてでも一歩も引かずに取組む?方針。石田隆社長は「自助努力の範囲を超えたコストアップ分を転嫁させてもらえなければ死んでしまう」と強調する。一方、原紙メーカーのユーザー向け指定原紙については、?段メーカーと同じ時期・同じ上げ幅であるべき?との考えを示した。

●王子チヨダではシートの上げ幅は15%程度(8円)ですか
 今回の価格改定の主旨は、原燃料コストアップ分の転嫁です。原紙価格の上昇分(王子板紙は?10円以上)に、加工工程で発生している糊・燃料・運賃等のコストアップを加えますと、当社の場合総平均で15%程度となります。シートについては、他社で平米8円と発表しているところがありますが、当社も同程度になるでしょう。ケースについては、一品一品コストアップの影響が異なりますので、個別にきっちり計算し、適正な転嫁をお願いすることになります。
 ●昨年の製品値上げは大きな成果が出ましたが、今回も同様に、数量を減らしてでもとお考えですか
 原紙?10円の値上げは非常に大幅です。例えば5円原紙が上がる時に5円分転嫁するのと、8割の4円分転嫁するのでは1円の差ですが、10円で8割となると2円になります。1円差なら加工業界、苦しくはなるが生きてはいけるでしょうが、2円も被ったら生きていけないところが沢山出てくるでしょう。
 数量どうのこうのと言っていられる状況ではありません。ユーザー業界も楽な所はなく、皆さん大変ですから、強い抵抗は予想されますが、我々も価格を大事にしていかなければ生きていけません。重要なことは価格を上げていただくという一点であり、他の何を犠牲にしてでも、一歩も引かずに取組むしか選択の余地がないのです。
 ●エンドユーザーの中には、昨年の値上げについて、かなり大幅で、強引であったとの印象を持つところもあります。そういう中で1年経たないうちに再値上げとなります
 今ありとあらゆる資源が猛烈な勢いで高騰し、日本中、いや世界中がきしみながら新しい価格体系に移行しようともがいています。時代は音を立てて急速に動いているのです。そういう時に、過去に例が無いからというようなレベルの話をしていても、どうにもならないでしょう。自助努力の範囲を超えたコストアップ分を転嫁させてもらえなければ、我々は死んでしまう、とお願いするしかないのです。
 実際、グループとしてはコストアップを目一杯背負い込んでいる状況です。王子グループ全体で3期連続減益で決算せざるを得ませんでした。また減益というわけにはいきません。上場企業グループとして事業を継続していくためには、適正利益の確保が必要です。
 ●多くの中小専業メーカーは大手に追随する形で値上げしたいという気持ちが強いようです。
 確かに価格形成力を持つためにはある程度以上の規模が必要ですから、そういう気持ちはよくわかります。大手が大手の責任として前に出なければ何も起きないわけで、我々も大手の一角としてその責任は当然果たす積りです。
 ただ段ボールは基本的に地場産業です。各地域地域で考えますと、中小といわれているメーカーも実はそう中小ではなく、大手もそう大手ではないということも事実です。そこのところは是非現実を直視してもらいたいと思います。
 勿論自由主義経済ですから、足並みが揃うか揃わないかはやってみなければわかりません。しかし仮に若干でも足並みが揃わなかったら、誰か他人のせいにしてこの値上げを投げ出してしまって、それで生きていけるのかということです。大事なのは、できない理由を見つけてできなかったと言う事ではないと思います。各社がそれぞれ自社の経営判断として価格と量の問題に答をお出しになれば、自ずとベクトルは合うはずです。少なくとも概ねは合うはずです。それで十分ではないでしょうか。競争社会の中で、全員の意見が完全に一致することは、普通は有り得ないことですから。
 当社は100%の転嫁をひたすらお願いしていきます。大手の責任ということもあるのですが、それより何より自社が生き残るためです。脇目も振らず走ります。その姿を見ていただいて、各社が賢明な経営判断をされることを期待します。
 ●製品値上げに向けて専業メーカーに望むことは
 昨年の加工賃改定で段ボール業界はようやく一息ついた状況ですから、専業メーカーが、この状態を変えたくないと思われる気持ちは良くわかります。私も、値上げをやりたいか、やりたくないかと問われれば、やらないで済むならやりたくありません。原紙サイドとしても、段ボールユーザー業界がおしなべて悪く、量も減少している現状はわかっていますから、値上げの時期を選べるものならば、今は選ばないでしょう。それでも値上げを打ち出さざるを得ないほど、原紙サイドは切羽詰った状況なのだということを、専業メーカーの皆さんには是非わかってもらいたいと思います。
 一方原紙サイドには、貼合メーカー向けの値上げと同じ時期、同じ上げ幅で指定原紙などエンドユーザー向けも上げることを強く要請します。貼合メーカー向けは10月10円ビタ一文まかりません、エンドユーザー向けはさあどうでしょうでは、コストアップで切羽詰っているといくら言っても、全く説得力の無い話になります。結果的に100点満点が取れるかどうかは別の話ですが、今は妙な落とし所を先読みするような時期では無いはずです。是非強い気持ちでエンドユーザーに向かっていただきたいと思いますし、王子板紙はそうしていると理解しています。
 ●王子チヨダでは値上げに向けて動きだしていますか
 既に動き出しています。10月1日は、大部分を占める3月決算のユーザーの下期スタートにあたります。下期の予算編成は通常7月に開始し、8月には大枠が決定するはずですから、まずはそこで段ボールの値上げ分を予算に入れておいていただこうということです。詰めた交渉はお盆明けからになるかもしれませんが、そういうお願いは早ければ早いほど良いですから。
 ●先日、株主総会が終わりました。前期を振り返っていかがですか
 前々回からの値上げ分と昨年の加工賃改定の分で段ボール加工は若干の増益となりました。原紙サイドは大減益。原紙と加工のトータルも大減益でした。
 今期は、当初予算編成の段階では、原紙は減益、加工は増益、トータルでほぼ横ばいの見通しでした。しかしその後の古紙・重油等原燃料コストアップの影響で、このままでは加工も増益幅減少、原紙は大減益・大幅赤字、トータルでも赤字になってしまいます。製品への価格転嫁ができるよう頑張ってやっていくしかないです。10月まで3カ月ありますから、とにかく粘り強く値上げをお願いするしかありません。
 ●王子チヨダの工場再構築について、九州、西日本地区はほぼ終了でしょうか。また今年、関東地区での再構築をお考えですか
 再構築は、地元採用の工場従業員にとって生活の基盤を揺るがす話ですから、軽々に将来構想をお話しするのは控えたいと思います。
 ただ、大きなビジョンとして王子グループを代表する、どこに出しても恥ずかしくない工場をつくりたいという夢はあります。王子チヨダは現在28工場ありますが、基幹工場と呼べるものがありません。合併の歴史の結果そうなっているのですが、普通製造業の場合、必ず主力工場だとか基幹工場があるものです。今一番近いのは大阪工場でしょう。今回の関西地区再構築で、大阪工場は基幹工場といえる存在になるはずです。もう一つ欲しいですね。なかなかハードルは高いですが、そういうビジョンは持ち続けたいと思っています。
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