有限会社
日刊板紙段ボール新聞社
東京都文京区湯島4-6-11
湯島ハイタウンA-509号
TEL.03-5689-0121
FAX.03-5689-0120
----------------------------
板紙・段ボール産業の総合紙。
紙器・段ボール企業を中心に機械・資材メーカーなどの動向をはじめ、箱を使うユーザーの動きも網羅。各種統計の分析なども充実。
----------------------------
甲府紙器?(小林明社長、山梨県)は、各地で生産相互委託を行うなど積極的な展開を見せている。小林康太専務は「過去2年の価格修正への取り組みを通じて、疑心暗鬼が払拭され、結束できた点が大きい」と述べ、延長線上に合併や共同購入会社設立など「中小の再編モデル」を描く。景気後退から1年経過した現状や輸入原紙、CFへの対応など、小林専務に聞いた。
●景気後退から1年が経過しました。現状は
食品は、冷夏など気候要因に左右された面はあったが、大きな落ち込みはない。工業製品は、前年比で2割程度落ちた時期もあったが、夏以降は回復傾向にある。
全体で見ると、最も落ち込んだ時で前年比15%減程度。比較的恵まれている方だろう。景気後退の影響は、実質半年といったところだ。
●需要予測では、下期は前年並みと予想しています
大手がけん引している面もあるが、明るい兆しが見えてきた。地域差はあり、山梨地区は比較的安定している。市場規模は小さいが、商売し易い。価格も原紙からの調整以降は落ち着いている。
●輸入原紙が注目されています
価格を優先し、採用することはできない。また、デリバリの問題もある。現状、不確定要素が多いものよりも、信頼が置ける国産原紙を選択する。
懸念すべきは、輸入原紙を口実に価格を下げる動きだ。景気後退で、空腹なのはどこも一緒。過去2年、同じ目標の下、進んできたことを大事にしなければならない。
●経営していく上で、重視していることは
お客様に対し、目に見えない部分、ソフト面のサービスで還元していく。段ボールケース自体は、他社と大きな違いを出すのは難しい。ではどこで違いを出すのか。営業力も含めた会社の姿勢だ。特に現在のような時勢だと、会社の姿勢が評価に直結する。安く売るだけではお客様は付いてこない時代だ。従業員には「オネスト(正直な)カンパニーになろう」と常々言っている。
今年、情報セキュリティのISOを取得した。製造業では前例の少ない試みだが、多くの反響をいただき、お客様との大きなパイプになっている。これも目には見えない部分だが、着実に芽が出てきている。
教育の一環として、幹部社員を中心に、外部機関での研修を開始した。外の空気を吸うことは、勉強になるし、まだまだ我々の業界が恵まれていることも実感できる。得たものを持ち帰り、新たな力に繋げてもらいたい。
また、当社は中途入社の従業員も少なくない。これもソフト面の充実を図る要因のひとつである。なぜ従業員の出入りが少なくないのか、サラリーの問題もあるだろうが、それ以外の問題が大きい気がする。愛社精神を育むための取り組みが必要だ。
生産面では、コスト意識の徹底を図っている。一枚くらいロスが出ても良いではなく、一枚一枚がコストに繋がる。お客様が使用するという意識を高めてもらいたい。そのためにもやはり教育。この会社に勤めて良かったというものが後々、大きなものに繋がっていく。
●新規事業はお考えですか
包装以外のグループ会社もあり、それらを通じた新規事業は考えているが、基本は段ボール。
段ボール製○○は様々あるが、コア事業に育つかと考えると、過去の実績を見ても難しい。裏を返せば段ボール自体が如何に成熟した存在かということ。ケース・シート販売を維持していくことが先決だ。
●設備については
製箱は、今年フレキソダイカッタを増設し、ひと段落ついた。コルゲータはドライエンドのバッカーなどリニューアルする予定。Cフルートのカセットも計画している。
●CFは今後のキーポイントになりますか
CFは、耐圧強度を維持したまま、高い積載効率を実現できるなど、お客様に還元できる点は多い。ただ、その側面だけを強調していて良いのだろうか。段ボール業界として、CFに取り組む本質的な部分は何か。大義名分でなく、本音の部分を共有し合わないと結果として疑心暗鬼に陥ってしまう。
●と言いますと
端的に言うとCFを理由に価格を下げて拡販するような動きを危惧している。AFからBFに仕様変更しても通常、価格に違いはないのに、CFだと安い、では明らかに矛盾する。本当に業界を挙げて取り組むのならば、移行期間を設け、一斉にCFに統一する必要があったのではないか。皆さんそこの所はあまり口に出して言わないが、もっと喧々諤々やっても良いのではないか。
段メーカーの若手経営者の集まりに参加しているが、大仰に言えば、我々の世代が未来の段ボール業界を救う世代である。大手の同世代と交流を持つ事ができればとの思いはある。30・40代がどんどん表に出て、発言していくことが必要だ。働きざかりの我々が声を大にしていかないと変化は起きない。
●今後の段ボール業界どのように見ていますか
川上の原紙サイドに限って見れば、ここ10年の再編で、ある程度固まった。次はコルゲート専業メーカーだ。中小同士の合併の可能性も十分あるだろう。
●オーナー会社同士の合併は難しい面があります
再編に直結するものではないが現在、当社では全国各地のメーカーとアライアンスを組み、相互生産委託を実施している。過去2年の価格修正で、大きな結束を構築できたことが、この動きを加速させてくれた。今後、関係が持続すれば、更に踏み込んだ展開も見えてくるだろう。
●統合・合併へと踏み出すためのキーポイントは
原紙を踏まえた資材の共同購買が分水嶺となる。将来的に中小同士の再編のモデルケースを作る動きに加わることができればと考えている。持ち株会社を持つのもひとつの手だろう。利益ベースは各社が独立採算でやればよい。成功すれば段ボール業界のひとつの大きな指針となるのではないか。
4月から始まった製品値下げ。各社ともに生産量を落とす中でも価格への意識は高く、想定内で進んでいる。日頃から「売価を1%上げれば営業利益は14%上がる」、「量を伸ばしても営業利益を増やすことは不可能と思っていい」と強調する関俊秀レンゴー副社長に、同社の現状及び進むCフルート化について聞いた。
●一連の値下げ、発表時期について色々な意見もありましたが、懸念されたようなこともなく進んでいます。レンゴーの状況は
昨年10月、原紙の10円値上げを受け、シート・ケースへの転嫁を開始した。シートは10月分から決着、ケースについても個別(時期、幅)に回答を得た。総じてシート、ケースともに新価格体系へ移行できた、と判断している。
今回、原紙の5円の値下げを発表、実行しているが、シートは4月分から?5円相当分以内に収まった。ケースは値上げ時同様にそれぞれ時期、幅ともに個別対応している。?5円相当分以内に収れんされるものと認識している。
●大手、ナショナルユーザーは
大手は支給原紙が多い。支給原紙先は原紙の?5円相当分で決着した。それ以上のオーバーランはない。値上げが遅れたユーザーは、4月以降の時期で同様のスタンスで交渉中。
あの時期(2月24日)の発表については、いろいろ議論はあったが、概ね成功だったと思う。ユーザーからも「透明性がある」と評価いただいた。個々の問題はあるにしても全体、トータルの判断は良かったと思う。
●他を取材しても値崩れすることなく同じような感じです。各社の姿勢がこの2、3年で大きく変わったからでしょうか
そう感じる。06、07、08年と連続して値上げを実施。特に07年の加工賃を前面に出した修正は画期的だった。08年にしても“原紙代分の値上げは当たり前”と受け止め?10円分を転嫁、出来れば変動費もプラスアルファしようとがんばった。意識は大きく変わっている。
●原紙がいくら変動しても加工賃さえしっかり確保すれば、段ボールは健全です
みなさんよくわかっている。昔の値上げは逆だった。原紙上昇分さえ転嫁できずに加工賃を削ってきた。利益を吐き出すなど、苦い経験を踏まえた学習効果が表れている。
●ただ、これだけ量が落ちてくると、もう少し機械を回したくなる段メーカーも出てくるのでは
色々な所でマッキンゼーの1%プライス理論を話している。これは売価を1%上げるとその会社の営業利益が14%上がる、というもの。会社の内容によって多少異なるにしても、だいたい当てはまる理論である。
もし売価を変えずに量で補おうとした場合は、4%伸ばさなければならない。しかも4%伸ばすには売価が一定なことはありえない。10%近く伸ばさないと、14%の営業利益は確保できない計算だ。
今の段ボール業界のように全体の量が減少している中で、量を追えば、当然売価は下がる。量を伸ばして営業利益を増やすことは不可能と思っていい。“量”は他に与える影響も大きく、必ず自分に降りかかってくる。ユーザーの揺さぶりはあるにしても、加工賃をきちんと確保することが大切である。
●量を追うごく一部の点が面に広がる心配は
たとえあったとしても、大きく影響はしない。地域の段メーカーはその地域では力もあるが、仮に量を追ったとしても広がるとは思わない。名前の出る会社はいつも同じ。みなさん冷静に見ている。
●段ボール生産量ですが、当初予測の125億平米と見ていますか
日本全体で生産減が起こっているが底を打ったのではないか。V字回復はないにしても、徐々に在庫が減って生産は上がってくる。明るさも見えてきた。125億平米は、1−3月はほぼ予想値通りになっており、いい数字だと思う。
●最近Cフルートについてよく耳にします
ユーザーさんも環境を重視し、Cフルートへの関心はより高まっている。ユーザー名は公表できないが、著名大手がCフルートの採用を決めた。今まで、レンゴーとA社がケースを納入していた場合、“両社ができなければCフルートには…”と躊躇したユーザーさんも、“できないのならば全量、レンゴーへ”と変化している。特に貼り合わせ頻度の高い工場は切り替えの進む速度も速い。
●Cフルート、レンゴーだけが突出しています
レンゴーは社長からのトップダウンで強力に進めてきた。会社のポリシー、方針の違いでしょう。
●数量の対比は
目標をAフルートからCフルートへの転換比率で立て推進している。
一番進んでいる工場で50%、Aフルートの半分がCフルートに変わった。遅れている工場で10%台。Cフルート化が進んでいるものは、米菓、スナックやティッシュなど軽いものだったが、青果物の一部、洗剤・化粧品へも浸透してきた。若干遅れているが、ほぼ目標どおり進んでいる。
●Cフルートを採用後、Aフルートに戻った例は
無いとは言えないがごく僅か。ほとんど戻らない。