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日刊板紙段ボール新聞社
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近年のIT業界では、インターネットの利便性向上や、可能性を広げる概念として「クラウド・コンピューティング」が提唱されている。?ユーコン(埼玉県越谷市)は、個人のパソコンが珍しかった時代から約30年に渡り、段ボール向けに業務効率化ソフトを提供してきたが、今回段ボール業界内で初めてクラウドによる効率化を提唱した。クラウド部門のリーダー、高橋玄取締役に聞いた。
−クラウドとは何か
簡単に言えば、従来パソコンに入れて使うワープロなど各種ソフトがネット上に置いてあり、ネットを介して使用するシステム。ハードやソフトなど個人の費用負担が小さく、使用が誰でもどこからでも可能になり、データの入ったディスクを探すなど物理的なコストも軽減できる。最近では、写真をネット上に共有し誰でも自由に印刷や加工が行えるなど、クラウドを利用して一般消費者向けにもサービスが提供されている。
クラウドには「パブリック」「プライベート」「シェアード」3つの形態がある。1企業で最低1つのサーバーを設置し、全国の営業所や従業員などがサーバーにアクセスして利用するのがプライベート。当社のような業者がサーバーを設置し、複数のお客様がサーバーにアクセスすることでソフトを利用するような「ASP」システムがシェアード。パブリックが、一般的にいうクラウドだ。
―段ボール業務でパブリッククラウド(以下クラウド)が必要なのか。
段ボールは貼合や製函など各社の業務がほぼ同じか似通っており、それならば従来のシステムで十分メリットを出せている。むしろ、顧客データなど各社多くの業務情報を扱っているのだから、プライベートやシェアードなど限定された規模で運用した方が安全で、現場に密着しており処理も速いため、当社のお客様もシェアードが最近多くなってきている。だが一方でクラウドは、ネット環境だけで業務ソフトを利用でき、サーバー管理が必要ないため、社内のサーバー管理者が辞めた場合でも「あのデータはどこいった?」「これはどう処理すればいい?」などの支障が小さい。既に世界中で構築されたインフラとも言えるネット回線を介するため、サーバー1台が飛んだら全ての業務がストップするクローズ等の形態と比較して、トラブルの可能性が極めて小さく、システムの簡単さや強固さで上回る。なので、従来より便利や優れたというものではなく、用途や業態に応じて使い分けるものだ。
―導入のメリットは。
今まで開発してきたソフトのように、「これにより○○が出来ます」と具体的にメリットを提示するのは難しい。通常業務を効率化するなら、従来のソフトの方が長年の蓄積で機能も進化し、価格もこなれてメリットが大きい。しかし製函など、各社が同じ作業はソフトで対応できても、工場によっては別の素材を扱ったり、全く段ボールと関係ない仕事をしていることもある。中には「ここを何とか効率化出来れば」という、その企業だけの特殊な問題もあるが、それらに従来ソフトのカスタマイズやオプション追加、新製品で対応していては、開発に時間もコストもかかってしまう。そのような従来ソフトで対応が難しい部分も、クラウドで賄うことが出来るようになる。
現在、当社が他業界のお客様で実施していることだが、社内の基幹業務は従来のソフトで、在庫や納期など営業マンが頻繁に確認するデータをクラウド上で利用できるようにしている。顧客先ではこのようなデータの確認ややり取りに、電話やFAXでは時間が掛かりすぎて、ノートパソコンを開いてメールを受信したり、PDFデータを展開する時間さえも惜しい。それがクラウドを利用することで、誰でもネットを介し本当に一瞬でデータの確認や利用が出来る。
―段ボールもそうなっていくのか。
段ボールは現時点で、ここまでやる必要はないと思う。段ボール企業もITによる効率化が進んだが、とある段メーカーでは未だに細かい外注をエクセルでまとめ印刷し、下請けのボックスメーカーにFAXして、ボックスメーカーはそれを現場で手書きしている事例があり、効率化が進んだ大手でも小ロットは手書きで処理している現場がまだまだある。
こういった複数の企業を介する業務などは、クラウドでデータを共有化し、関係者なら誰でも直接アクセスし一瞬で処理できれば、人手による作業やそれに伴うミス、確認作業などをどんどん減らせる。営業を強化したいなら、ケースユーザーの注文を少しでも早く処理したり、ユーザーの生産計画をリアルタイムで把握しケース受注や配車を先回りして計画したり、仲の良い段ボール企業同士で、空車あるいは近いトラックを融通し合うことも出来る。これはクラウドの一例だが、ハードやOS、導入しているソフトなど各社バラバラのIT環境でも協力し合える。
―クラウドをどう提案していくのか。
クラウドは今までのシステム提供と異なり、お客様と共に考え、お客様にフィットした仕組みを提案し、お客様のアイデアとやる気次第でどのようにもIT環境を構築できる強みがある。なので、お客様それぞれでやりたいことを、今は荒唐無稽だとしても何でも当社に言ってほしい。
段ボールにはクラウドによって業務拡大や分業など改善できる余地がまだまだある。お客様には現在の業務だけでなく、新しいビジネスモデルの構築など中身の濃い仕事をしてもらい、当社はそのお手伝いが出来ればと思う。