板紙・段ボールから印刷紙器までを網羅した専門新聞社です

qrcode.png
http://itadan.com/
モバイル版はこちら!!
バーコードリーダーで読み取り
モバイルサイトにアクセス!


有限会社
日刊板紙段ボール新聞社

東京都文京区湯島4-6-11
湯島ハイタウンA-509号
TEL.03-5689-0121
FAX.03-5689-0120
----------------------------
板紙・段ボール産業の総合紙。
紙器・段ボール企業を中心に機械・資材メーカーなどの動向をはじめ、箱を使うユーザーの動きも網羅。各種統計の分析なども充実。

----------------------------

日​刊​板​紙​段​ボ​ー​ル​新​聞​社​
 

過去のインタビュー【2】

 

過去のインタビュー【2】

過去のインタビュー【2】
 
ボブストGジャパン・福井好子社長(6月17日)
2011-06-17
 「エンジニアが少ないという誤ったイメージの払拭」、「定期メンテナンスの普及」。福井好子ボブストグループジャパン?社長は、アフターサービスの更なる拡充に向け、課題を挙げる。機械販売は新機種発売が奏功し好調ではあるが、従来の「大手=最高クラスの機械」という図式が崩れつつあるとして、将来的なラインナップ拡充も模索する。東日本大震災での対応なども含め聞いた。

 ●東日本大震災後の顧客対応について
 震災直後から被害状況を積極的に確認させていただいた。但し、現地に直接電話することで限られた回線が使用できない事態を避けるため広域メーカーならば本社経由で連絡を取った。また、先方から要請があった場合は優先して支援させていただいた。
 北関東や内陸部など距離的に近く比較的被害が少ない所から修復作業は進んでいったが、福島県以北の、より被害が大きく、お客様自身が被災されている所は、当初ガソリンが枯渇し宿泊場所も確保できないなど、我々が伺っても結局お客様に頼らざるをえない状況で、反ってご迷惑をかけることになる場面もあった。それが一番のジレンマだった。
 震災後数週間は、社員の気持ちもどことなく沈んでいたが、「明るく、明るく」と発破を掛け、「私は極度な自粛はしないし、みんなも自粛し過ぎないで欲しい。復旧・復興に尽力していこう。」と伝えた。
 ●新デモセンター(大田区・京浜島)でのオープンハウスも予定されていました
 春に開催する予定だったが、電力問題等で無期延期の状態。プライベートデモは、5月より実施予定だが、大々的なオープンハウスは難しい。
 今後、ボブスト上海やスイス本社をより積極的に活用していく。特に上海への2泊3日程度の視察ツアーを企画したい。 昨年まで埼玉・本庄の旧デモセンターに西日本からお越し頂く際に要した程度のご負担でツアーを組むことができるだろう。  
 スイス本社も来年には、古いプリリー工場はメイ工場に移転となる。スイス本社のコンピテンスセンター(デモセンター+トレーニングセンター)は、従来よりもさらに拡充されるので、来年のDrupaツアーの目玉となるであろう。
 ●社長就任以来、アフターサービス重視の姿勢を打ち出しています。ただ、貴社のアフター人員は少ないのでは?との声も聞かれます
 まず、「ボブストはエンジニアが不足している」とのイメージを払拭しなければならないと考えている。現在エンジニアは15名、サービステクニカルサポートデスクも含めると20名超在籍する。 サービス人員体制は30年間近く変化していないが、数名しかいないという極端なイメージが浸透している。 
 主な要因は二つ。ひとつは、電気系については、確かに経験者の退職などや、マシンにおける技術革新にともなって、お客様のニーズも増えてきており、十分な対応ができていない。この点は強く改善したいと考えており、現在も、電気系エンジニア正社員を2名募集している。現時点で採用に至っていないが、妥協せず、将来的な可能性を持った人材を採用したい。
 二つ目としては、おかげ様で、この所、サービスエンジニア稼働率がかなり向上している。週末を中心に計画修理、メンテナンスのご予約をいただいており、スタッフのスケジュールはかなり埋まっている。 
 だからと言って緊急故障で連絡いただいたお客様に、「予約のお客様の所に行っています。」とは言えない。 
 結果、人員不足と捉えられてしまっているかもしれない。緊急停止などは、お客様においてもロスに繋がるため、定期メンテナンスを強化するよう、継続してお客様に働きかけていきたい。
 ●早めに点検、修理した方がロスも費用も最小限で済みます
 まさにそのとおりです。お客様も早めの点検、修理の重要性、あるいは故障の兆候には気付いているがどうしてもギリギリまで我慢してしまう。
 ●何か打開策は
 「簡易点検・メンテナンスサポート」として、平日3時間、作業費、交通費、諸経費全て込みで、全国一律3万9800円のキャンペーンを展開している。エンジニアは音を聞くだけでも、ある程度の機械の調子を判断できるので、3時間あれば簡易点検が可能であり有効である。
 3時間という時間は、昼休みを挟み前後1時間程度で、生産停止を最小限に止められることもメリットである。積極的に展開していくため破格な値段設定にした。何より点検の重要性を十分に理解いただきたいというのが一番の目的だ。
 最終的には使用頻度に合わせて3カ月もしくは半年に一度の定期点検を実施し、その後定期保全により性能を維持するといったサイクルに持って行ければお客様も計画が立てやすい。まだまだ、ご存知ない方も多く、更なる周知を図りたい。
 ●例えば、OA機器では購入時に、定額制の定期保守点検がパッケージされています。段ボール機械でも同様の試みはありますが普及していません
 製品の多様性、マシンの使用年数などの大きな違いから、OA機器と同様の方式は、難しいところがある。段ボールメーカーは、製品については、生産量、種類とも、多様化しており、マシン導入時に、どのような点検が相応しいかを見極めることも難しい。 
 さらには、「ジャストインタイム」での生産体制が定着していることや24時間操業体制等、エンドユーザーにとって在庫を持たないメリットは大きいが、他の産業界も全体的に言えることだが、エンドユーザー、次に段ボールメーカー、最後に機械メーカーというヒエラルキーのマインドを確立してしまっている傾向も否めず、結果として、定期的な保守点検の計画化、予算化を難しくしている要因ともなっている。
 ●サービスの対価を得るのが難しいのは日本特有ですか
 成熟市場で見た場合は、日本特有と言えるかも知れない。欧米では、サービスは、産業が成熟していく過程で、アフターサービス=有償として認識されていく。
 有償サービス・定期メンテナンスサービスの普及を妨げる要因のひとつには、前述のマインドのみならず、日本の文化としてよきサービスが無償(例えば、飲食店で水やお茶が無償であることをはじめとして)で提供されていることなども関与しているかもしれない。 定期メンテナンスの普及においては、ハードルは高いが当社としては、より定着するための挑戦を続けていく。
 ●販売について新型段ボール用自動平盤打抜機「エキスパートカット」はいかがですか
 良い引き合いをいただいている。早い時期に良いお知らせができるかと思う。「エキスパート」発売以前は、160サイズがない時代が数年続いた。170サイズで最高機種の「マスターカット」しかお客様に提供できなかったが改善された。
 一方、日本市場ではもう少し下のクラスへのニーズも高い。「エキスパート」の下に「ビジョンカット」があるが、競合他社の同クラス機の価格が非常に良いので厳しい。
 耐久性には絶対的な自信を持っているが、お客様は購入時に20〜30年スパンの使用を想定しない。10年単位もしくは、それ未満の想定で良いという需要に「ビジョン」ですら合致しない場合もある。「マスター」、「エキスパート」と揃い、「ビジョン」の位置付けを見直す段階に来ているかもしれない。
 ●平盤メーカーはアジア製低価格機をラインナップしています。低コスト機の導入は
 可能性はゼロではない。模索していきたい。今年1月、グループ100%子会社となった上海・エテルナ社もある。日本で紹介できるのか検討する必要はある。   
 ●大手段ボールメーカーにもアジア製低価格機を採用する動きがあります。貴社が従来描いていた「大手=最高クラスの機械」を頂点としたヒエラルキーが崩れつつあるのでは
 確かにそういった側面はある。元来、保守的な業界なので「まさか、あの会社が」という感覚が根強く、我々も当初は払拭できない面があったが、現在は新たな視点に立って見ている。市場の動きをより柔軟に、三角形だと思っていたヒエラルキーは既に終わったと認識しなければならない。
 今後、震災の影響もあり、業界の方々もしくは消費者の考え方、価値観がどのように変化するのかを踏まえ、勇気を持って動くことが求められるだろう。
 ●というと
 日本の品質要求(製品外観をはじめとして)は世界一高く、他を圧倒する水準にある。しかし、結果として、コスト高をはじめとする閉そく感に繋がっている可能性も高いと、段ボール業界に限らず交流のある多くの経営者が述べている。従来の品質重視は、製品によって、「安心・安全重視」もしくは「エコ重視」などという価値観を追求する、価値の多様性に向かうと期待している。
 ●品質に関して日本は特異な存在ですか
 世界的にみて特異といえる。背景としては、産業としての成長が急速且つ成熟が早かったことに加え、地理や国民性等も理由に挙がるだろう。さらには、教育水準や生活水準が高く、情報は非常に早く行き渡り、標準化が速い。同時に標準化から抜け出す創造性や多様性が育ちにくいともいえるかもしれない。
 一方で日本は非常に世界で尊敬されており、「ジャパンブランド」は健在だ。ボブストグループジャパンはボブストマシンが日本でも認められている事実を世界に発信することによって、ブランドとしての信頼維持の役割をも担う。 
 中国、インドといった成長市場や中東やアフリカといった成長が予想される市場で展開していく上でも、日本市場の果たす役割は重要といえる。
 ●日本から世界的機械メーカーが撤退、日本の主要メーカーも以前に増して欧米や新興国に目が向いています。日本市場は魅力がありますか
 前述の世界における役割のみならず、市場規模として、もちろん、非常に魅力的である。ただし、急成長期やバブルの時代は終焉して久しい。
 現在のビジネスモデルとして、前述したように、従来の機械に付随したサービスという価値観から、ノウハウをも提供できるよう、機械販売というハード部分と、アフターサービスやコンサルタントとなどのソフト部分が同じ立ち位置で提供していけるようにならなければならない。
 
日本紙工機械G・張会長 小崎社長(5月7日)
2011-05-06
 ?日本紙工機械グループは、中国の打抜機メーカー上海耀科と提携し、菅野製作所(以下菅野)のノウハウを注入した新型自動平盤打抜機を開発した。日本主導で、高い品質とコストパフォーマンスを両立。量産化を視野に米国での展開も図る。開発の経緯や今後について、張春華会長と小崎享社長に聞いた。

 ●新型の自動平盤打抜機を開発、公開運転します
 お客様が求めている価格・時代の流れ・ニーズに沿って展開するため、いかに菅野の強みを引き続き提供できるか、1年かけて研究した。その結果として今回、中国の力を借りたが、前提として中国メーカーのレベルは上がってきているという事実がある。上海電気グループの延長線上で、弊社の中国事業所において上海耀科との資本も含めた全面的提携に至った。平盤打抜機では、中国で5本の指に入るメーカーである。
 上海耀科は、打抜機を生産する技術とノウハウがあり、すでに先行してドイツやフランスのメーカー、日本など3社ほどと連携の経験がある。ただ、今までは上海耀科側が設計等に従事してきたが、今回は、弊社グループの生産技術等で主導し、製造した初めてのモデルケースだ。
 ●導入側最大のメリットは
 コストよりも性能面が大きい。日本紙工機械グループの生産責任者である日本人スタッフが、現場責任者として常駐し生産した。また、メインである心臓部の部品はすべて日本から支給し、パーツや資材の指定、チェックなどもすべて日本主導で行っているため、生命線である菅野のノウハウや機構は確保され、日本製にも劣らない性能である。最終的な試運転も日本で行った。
 ●マシンの能力は
 納入先であるお客様の要望は6千枚だったが、先日立ち会った社内テストでは、7500枚に達していた。1050?は板紙用のサイズだが、お客様は段ボールも抜く。
 ●サイズの大型化は
1号機でもあるため、まずは最もニーズの多いサイズに設計した。もともと菅野は板紙用の打抜機メーカーなので、その意味でも1050?とした。上海耀科では、実際に段ボール用1600?サイズの打抜機も製造しており、今後は1600までラインナップを拡充していく。
 ●上海耀科の規模は
 年間売上高は約13億円の中堅メーカー。従業員はグループで350名ほど。同社の強みは部品から製造できることだ。上海電気と資本提携を結んでおり、オーナーは上海電気傘下のグルアメーカー社長を兼任している。資本提携企業にドイツ・マベック社があり、新型機には最高級の給紙機を搭載できた。
 ●同じ機械を日本で造った場合と比べ、コストパフォーマンスは
 第1号機は開発費用がかかっているが、最終的に目指す価格は、ユーザーの求める相場、市場の価格である。他メーカーの海外製と同等の価格で、当然勝負していく。加えて、中国で立ち上げたもう一つの目的は価格を抑えるための「量産化」にある。
 ●量産化とは月何台くらいを指しますか
 最低でも月に5台。国内だけでは不可能なので、中国でも販売したいが、やはり価格が課題となる。量産化の意味では、今後は米国へ輸出も再開する。
 ●菅野は以前、米国で子会社を展開していました。再開するわけですね
 現在、マーケティングも含めて準備段階だ。まずはサービスに着手する。菅野の機械は実績もあるので、既存のお客様に対するアフターサービスは開始している。販売については1〜2年かかるだろう。
 ●米国での実績は
 中古、グルアを含め100台以上という認識だ。現在どれくらい稼動しているか調査しており、終了後2〜3カ月以内で日本紙工機械グループのサービスに完全に切り替えていく。
 経験上、タナベの再建にしても、軌道に乗るまではだいたい3年はかかる。お客様に安心いただくという最初のポイントは、サービスにある。それがなくては、例えいくら復活したとアピールしてもお客様は信用しない。
 ●軌道に乗るまで3年とのことですが、ファンドの償還期限は2014年です
 ファンドというよりも、結局企業にとって良いこと、やるべきことをすればすべての利害関係者に応えられるという発想である。株主が代わるからといって、それを止めてしまっては、企業としての永続的な発展はあり得ない。14年にどのような形になるか、まだ決まっていないが、「やるべきことをやる」という基本理念の企業なので、仮に他の方々が株主になっても容易に受け入れられると確信している。
 昨年12月期は黒字だった。利益の多くを新製品の開発に投資し、頻繁に内覧会を開催している。会社の価値が向上しているため、結果的に株主にも還元できていると考えている。
 会社のM&Aの観点では、売る際に目先の利益も重視するが、次の買い手(オーナー)は成熟産業の企業に「成長性」がないとやはり買わないだろう。事業内容が不透明な会社は敬遠される。そして「成長性」の一つが今回の新型機開発など中国での展開である。日本の機械メーカーは今後一層、世界市場に目を向ける必要がある。
 パッケージ分野は世界的にも成長分野。ただ、国内は閉鎖的な面もある。たとえポテンシャルを持っていても、目先のことにしか対応できていないように思えるような場面もある。紙工業界としてのこれまでの経験値だけでは、今後生き残っていくには限界がある。良し悪しはあるだろうが、欧州の先進メーカーと比べて、そこが欠けている。弊社も含め、独立して展開しているメーカーは限界を感じているのではないかと思う。
 ●改善策は
 かつて大手(機械を使う側)では自社のマシンショップを抱えていたが、例えば各社が株を出し合って日本紙工機械グループを擁立して活用するようなことがあっても良い。運命共同体的な意識が、まだ欠けている。本来であれば、メーカーとユーザーがフェアで対等でなければ、良いものは造れない。これを改めていかなければ若手が入れない、永続性のない紙工機械業界になってしまう。
 日本紙工機械グループの強みはネットワークにある。これまで閉鎖的な国内の紙工機械業界をもっとオープンに展開すること、これが次のステップだと考える。今回の第1号機を順調に、1年間で計画的に造れた要因も、海外の優れたツールを活用できたことにある。
 ●今後、抜きは菅野、グルアはタナベと特化していきますか
 現状、販売会社として両ブランドを残しているが、会社の管理体制として日本紙工機械グループに一本化している。タナベで以前打抜機を製造していた時期もあったが、そこを持ち出すことはない。打抜機は歴史的にも菅野がずっと得意としてきた技術なので、これをベースに中国の協力を得て新しいものを造ろうというコンセプトである。
 業界内では一般的に、段ボールのタナベ・紙器の菅野というイメージがある。両ブランドおよび販売会社をどのように有効活用するか、思案中である。
 
佐野成人・王子チヨダコンテナー社長(3月17日)
2011-03-16
 国内産業の高付加価値生産へのシフトに伴い「段ボールも必ず美粧化に向かう」と佐野成人王子チヨダコンテナー社長。昨年東京工場でEF製造を開始、他工場での展開も見据える。大手ユーザーの支給、指定原紙化には「非常に疑問」と述べ、原紙固定化はユーザー、段メーカー双方にとって将来的な発展の妨げになると危惧する。その他、市況、設備投資の方向性、海外事業など聞いた。(インタビュー2月21日)。


 ●現在の市況については
 極端な動きはないが、シート価格は、地域によっては弱含みのところがあるかもしれない。しかし、統計的には殆ど売価に変化はない。人間の心理は、案外、安定していると思っているところで綻びが出る可能性があるので、厳しく営業の手綱を締めている。各社とも囚人のジレンマに陥らないことだ。
 また、コスト面は、コンスターチや重油価格は急騰しており、頭の痛いところだ。特に、段ボール古紙の価格動向は、原紙価格を左右するので関心を持ってみている。現在のコスト環境が更に悪化することはあっても、好転するとは考えづらいので、現在の市況維持は勿論のこと、その先のコスト動向を見極めた対応を考える必要がある。特に、段ボールの営業スタッフには現状を良く認識させ、お客様に状況を丁寧に繰り返し説明をし、ご理解をしていただくタイミングになっていると考える。
 ●大手ユーザーの指定、支給原紙化も活発です
 総合商社を介した販売については非常に疑問を持っている。やはり段ボールメーカーがビジネスを行う以上、自ら原材料を選択し、技術力を駆使した新提案を行うのが本来の姿である。主材料である原紙がロックされては将来的な発展性が期待できない。
 確かに当社グループの場合、板紙でのメリットはあるが、段ボールの立場からしたら専業メーカーと同様のスタンスで発言せざるを得ない。専業メーカーにとっては原紙メリットが全くなく、加工賃だけになってしまう。 
加工賃の範疇は狭い。大量購買によるコスト削減効果ばかりに目が向けられているが、ユーザーにとって一時は良くても将来的な可能性は狭まる一方だ。
 軽量化、薄物化への取り組みも原紙がロックされた状態では柔軟な提案ができない。例えば180?を指定している場合、我々の包装設計ならば160?も可能だと提案しても他社が対応できなければ変わらない。そうなれば160?の提案自体必要ないことになり開発面での自社努力が減退する。営業スタッフも増やす努力をしなくなる。決して日本の段ボール産業にとって良い方向性とは思えない。
 ●薄物化に関して、貴社はEフルートを強化しています
 昨年、東京工場にEF設備を導入した。今後、日本のプロダクトメーカーは更に高付加価値生産に切り替わらざるを得ないだろう。大量生産製品はコストの問題で海外に流出していく。11年度の予算作成にあたって頭が痛いのは弱電メーカーが普通サイズのテレビの生産を国外へシフトしている点で、これをメインにしている工場への影響は大きい。
 国内に残るのは少量だが高付加価値な製品であり、自ずと段ボールを含めたパッケージも美粧化に向かう。美粧印刷のためには段高を低くする流れが加速するだろう。 
青果物分野でも今後需要が伸びるのは地域特有の高級品分野で包装も個装単位となる。そのためにもE、マイクロFを生産する体制を技術的に確立しなければならない。
ただ、日本の場合、美粧段ボールと通常の段ボールの価格差がなく、従来敢えて取り組もうという流れが少なかったことから、海外と比べても完全に遅れをとっている。
 ●外装段ボールと同様のスタンスで捉える必要があると
 そうだ。当社グループも含め日本のEF以下のディビジョンは収益性が良いとは言えない。少なくともEFは外装と同様の体制で取り組む必要がある。
EFは現在東京工場で月産10万平米程度だが、早く30万平米に乗せようと指示している。これが達成された後、カセット式SF有する他工場でも導入を進めていく。
 ●貴社のEF強化の動きに反発もありますが
 既存コルゲータでEFを確実に貼合できるかどうかは技術力の問題だ。AからCへの転換と比べて、BからEへの転換は技術力を要する。糊量や熱量の削減といった開発努力を行うか否かに懸っている。それに対する反発は理不尽である。
 あくまでも将来に向けた第一歩であり、決して現在EFをメインとしている会社の仕事を奪取することが目的ではない。日本の段ボールが高付加価値製品を包む包装材となるためには美粧化を進めなければならず、自ずとBよりもE、Eよりもマイクロ、マイクロFよりも板紙という方向性の技術開発が求められる。決してEFで終わりではない。
 ●既存の印刷機でEFの印刷は可能ですか
 私は技術部出身で、技術的に可能性のある話しかしない。まず現在の印刷機は従来のキッカーからリードエッジに給紙方式が変わった。キッカーはある程度シート厚がなければ難しかったが、リードエッジならば給紙できる。それに現在は1枚ベルトでのシート搬送が大勢を占めており、可能性を備えている。
 その努力をなぜ機械メーカーはしないのか。8?のシートと0・6?のシートでは印刷機のタッチや印圧の接近などが難しいというならば、WFやAFが印刷できなくても良いので、B、E、F、300?程度の板紙が刷れる薄物に特化した機械で良いと要請している。国内メーカーが対応できないならば海外メーカーの提案であっても受け入れていくつもりだ。
 ●薄物ライナーへの対応は
 Kライナー120?は06年の帰国当初より取り組み、既にプレプリントで印刷し、複数の段ボール工場で貼合もしている。120?に取り組むにはマシンのメンテナンスも従来以上に慎重に行わなければならない。
実際に皺の問題などが生じたがロールのバランスを調整するなど非常に多くの時間と費用をかけて解決した。現在、貼合の対応チェックが完了しているのは現在4工場のみだが、大手飲料メーカーに提案するとなると他の工場でも対応が必要となる。 
 この取り組みは技術力向上の面からも重要だ。120?が貼合できれば、当然それ以上の坪量でも皺の問題は解決できる。しかも120?の貼合には糊量削減が必要不可欠で、結果的に他の坪量でも糊を削減する方向に向かう。エネルギー食糧事情の問題でトウモロコシの価格が話題になる時代だ。コンスターチの使用量は削減しなければならない。
 現在、平米当たりの糊付着量は平均7?を切っている。今後6・5?程度を目指すが、EF、120?に対応できない工場では土台無理な話である。
 ●大手を中心に大規模な設備の動きが活発です。貴社の場合は
 ただ単に収益を上げているから設備投資するというのは単純過ぎる。もちろん、経営面から利益を上げている際の設備投資は重要だが、それが後々命取りになったのでは本末転倒だ。先述したように、ある程度実績を上げたうえで、設備導入するのが私のスタンスである。EF設備などは予算外で導入したが、それは重要戦略だからだ。シュリンクする日本のマーケットで新たな展開を図り販売実績につながる設備投資は今後も積極的に行っていく。設備投資はビジネスに直結して初めて価値がある。
 また老朽化による更新も同様に単純だ。単なる更新が目的ならば、可能な限り低コストで済ませたい。そのためには国産機械のみにはこだわらない。台湾、中国をはじめとするアジア各国の技術力向上は目を見張るものがある。極端に言えば、コルゲータであっても通常の仕様であるならば安価な海外製でも良い。
 11年度後半には台湾メーカーの印刷機を当社の直轄工場で導入する。重包装分野では既に海外製機械は稼働しているが、一般分野では初めての試みである。その能力を見極めたい。問題がなければひとつの選択肢となる。
 従来の日本の段ボールメーカーが取り組んできた流れから少し逸脱したやり方ではある。もちろん従来の方向性を全否定しているわけではない。来年度もFFGについては国産機を複数台導入する予定である。ただ、それだけでは駄目で常に新しい方向性を模索していかなければならない。
 ●国内のグループの再編については
 収益が悪いから閉鎖するのではなく、国内マーケットの動向、ロケーションを加味して取り組むという従来からのスタンスで臨んでいる。結果的にこれまで実施した再編でもほとんどの地域で収益体質に変わった。
 10年度後半は東北地区の関連会社を中心に再編している。その際、単純な廃止、統合ではなく新分野への変更など何らかの新展開を図っていく。
 ●段ボール事業の海外展開ですが、マレーシアの一貫メーカー・GS Paper&Packaging Sdn. Bhd.(以下GSPP)を加えたことで格段に幅広くなりました。ベトナムでも展開しています。今後、更に海外で資本投入していく方針ですか
 そうだ。10年度の日本の段ボール生産量は103・5%程度で11年度の予想は101%程度、これが日本のマーケットの現実である。一方、東南アジア諸国は総じて105%以上で、伸びる地域で設備投資するのが経営者だ。
 GSPP買収が契機となり、東南アジアでの王子の知名度は一気に上がり、多くの案件が持ち込まれている。今後も東南アジアへの進出は一気呵成に進めていく。GSPPのマレーシアでのシェアは13%。北部、中部のみの展開だったので、南部の段メーカー、ユナイデットコタックを買収した。同社のシェアは4%で計17%のシェアとなった。早晩シェア30%を目指す。
 その際、GSPPは一貫メーカーであることから、自前で段ボール工場を建設したのでは地場メーカーの反発もあるだろう。よってTOB(株式公開買い付け)による拡大を考えている。ただ単に段ボールメーカーではなく、軟包装など多角的に事業展開しているメーカーに注目している。一方、ベトナムには原紙部門はないので工場を新設する方針で進めている。
 インド進出についても急激に話が進んでいるが、具体的な時期は現時点でコメントできない。ただ、インドもグループの板紙メーカーはないので基本的には自前で段ボール工場を建設する方向性を模索している。13億人を擁し、高成長を続けるインド市場の購買力は目を見張るものはある。この市場に後塵を拝し進出するようでは駄目だ。他社に先んじて取り組んでいく。
 
山發日本・藍瓊娥副社長(3月7日)
2011-03-08
 「輸入紙と古紙輸出」。両分野で先駆的存在である台湾大手製紙、正隆グループ会社の山發日本?。藍瓊娥(らん・けいが)代表取締役副社長は輸入紙について「本国での需要増とアジアでの世界的メーカーへの指定紙化に伴い減少傾向」と述べるとともに古紙輸出は「難しい局面だが問屋との長年の絆がある」と更なる量確保を狙う。日本の板紙業界には「本当にそこまで高い品質が必要あるのか」とし、過度な品質が国際競争力に影響するとの見解を示した。

 ●原紙輸入及び古紙輸出を手掛けています
 1994年に設立。正隆グループの一員としてグループ全体を補助する役割を担っているが、日本支社との位置づけではなく、あくまでも総合商社としての地位確立を目指している。主要事業は原紙の販売、古紙及び廃プラの輸出、一部機械類の輸入も行っており、グループで原紙が不足した場合は、日本から輸出することもある。また東京と大阪に自社ビルを保有し、不動産賃貸も行っている。昨年度の売上高は50億円程度。事業別では輸出古紙(含む廃プラ)が8割、原紙輸入が2割程度を占める。
 ●輸入紙の現状は
 競合他社とは違い、既に20年以上日本で展開しているが、減少傾向にある。ピークは95〜98年。現在はピークと比べ25%程度。長年お付き合いいただいている顧客を中心に細く長く販売している。品種別では、最近は中しんは価格面で厳しいこともあり、ライナ8割、中しん2割。顧客は大手専業、中小、地方メーカーと様々だ。
 ●減少要因は
 現在の正隆の原紙生産量は家庭紙も含め年135万?程度。2010年の台湾の経済成長率(GDP)は10%で、この成長で段ボール業界も波に乗り09年と比べて14%成長した。その対応が最優先となっている。
 また中国はもちろん、ベトナム、タイでも展開している。これらアジア諸国では、スポーツ用品やパソコンメーカーをはじめとする多くの世界規模のユーザーに指定原紙の形で供給している。正隆自体の生産量が変わらない中、そちらへのシフトも進んだ。
 加えて、日本のマーケットの厳しさもある。価格と品質要求を考慮した場合、採算ベースが厳しい。ただ、日本に進出すれば品質が安定する。日本で評価を受ければ、どこに持っていっても通用する。このメリットは展開する原点となっている。
 ●輸入紙の中では品質が安定しているとの声も多く聞かれます
 品質規格は日本市場に合わせて生産している。日本の製品と比べて印刷適性の良さ、強度もそん色なく、価格面でも魅力がある。日本では長期安定供給が最も求められるが、デリバリもほぼ同様の対応が可能である。その点で競合他社と比べ優れている。
 ただし、日本の板紙生産量はピークの00年に年間960万?だったが、昨年は866万?程度。もうピーク時には戻らないだろう。当然、当社も影響を受けているが、撤退することはない。今後極端な拡大は望めないが、既存ベースからのプラスαは目指していく。
 ●今年、薄物外装ライナ用マシンが稼働します
 7月に稼働する。年間生産能力は40万?程度を予定している。
 日本も薄物化傾向にはあるが、海外と比べ進んでいない。例えば中国では100?の中しんは当たり前。ライナも125、150?。日本向けをメインに生産していくことは考えていないが、需要があれば輸入する体制は整っている。稼働時にどの程度、日本で薄物化が進展しているかによって判断したい。
 ●エンドユーザーには輸入紙の伸長を望む声も
 日本国内での販売も重要だが、日本のユーザーも今後海外へと拠点を移し、製品を逆輸入するケースが更に増えるだろう。そういったユーザーに対しグループとして供給体制を構築している。既に東南アジア諸国に進出した日系メーカーとの取引は積極的に展開している。
 当社は日本のマーケット、ユーザーが何を求めているのか、どのような考えを持っているのか、情報収集を行ないグループに伝えている。またユーザーが海外に進出する際は、グループの工場を紹介している。これは今後、更に強化していく。
 日本経済全体を見ると、円高の問題や、市場のシュリンクが見られ生産も一部減少しており、海外に目が向いている。大手に限らず、中小も海外に進出したいはず。そのお手伝いをできればと考えている。
 ●正隆が世界的大規模ユーザーに強い理由は
 受注窓口が一本化している点、包装設計と生産を多国籍に展開している点が支持されている。
 台湾の段ボール工場は8カ所だが、人口は2300万人程度で年々減少している。今後、中国、東南アジアの方がGDPの成長が期待できる。現在、中国に段ボール工場は14カ所で月産生産平米5千万平米あまり。今年は更に3カ所増える。ベトナム2カ所、タイにも1カ所工場がある。
 ●日本からの古紙輸出については
 厳しい。円高の影響も大きいが、最大の要因は過当競争にある。現在の古紙買付は情報で上がり下がりを判断し、価格が決定されている。需要に応じた上がり下がりではない。そこまで過当競争が進んでしまった。大手商社、中国系商社、一部問屋輸出が乱立。最近は中国メーカーが直接買付をするパターンも増えてきた。
 ●昨年の総輸出量は430万?。貴社の輸出量はどの程度ですか
 具体的数量は言えないが、段ボール古紙はほぼ正隆。雑誌、新聞古紙は中国やタイなどその他メーカーに輸出している。
 前述の通り、マシン新設で生産量は月平均3万〜4万?増える。古紙調達も更に強化しなければならない。昨年は前年度比で30%増加した。今年も60%は増やしたい。難しいが、目標に向かい頑張っていきたい。
 中国系メーカーの調達会社は直納問屋に限らず代納業社や更に下の回収業者にも手を広げており末端まで競争させる。当社は直納問屋からの購入1本。代納にも行かない。
 ●ただ、価格を出さなければ調達は難しい
 価格は重要だが、お互いの信頼関係を最も重視する。95年の古紙のゴミ化問題を機に、輸出を始めた。よって問屋との付き合いは長く絆も強い。
 当社のやり方は非常に日本人の発想に近い。あまり無理はしないし、取引先にもさせたくはない。末永く付き合っていく。あくまでも当社のファンに扱ってもらわなければならない。ファンであれば、付き合いは自ずと長くなる。現に価格だけの所は転々と変わっている。
 ●日本古紙の評価は
 非常に品質が良い。ただし、過当競争が原因なのか、最近一部品質が落ちてきている。例えば従来、紙管原紙は段古紙には含まれていなかったが、今は粉砕して混ぜており、品質劣化に影響している。
 ●日本の製紙メーカーも古紙確保に四苦八苦しています
 現状、輸出価格と国内価格の差が広がっており難しい局面だろう。現時点で品種にもよるが、?3千〜4千円の差がある。古紙問屋の立場から見ると非常に膨大な差である。将来的には日本の古紙価格も国際マーケットと同様になるのではないか。でなければ調達は更に難しくなるだろう。
 安価な原料の時代は終わった。今後、古紙を取り巻く状況はアジアのインフレとともに高い水準で推移するだろう。昨年1月の価格がドル建てで?185?だったのが、年末には245?と上がる一方だった。200?以下には戻れない世界に突入したのではないか。
 ●日本の板紙業界をどのように捉えていますか
 日本の品質に対する極端な厳しさは環境の観点からみて相反するところがあるのではないだろうか。なぜ日本は洋紙でも板紙でも2級原紙がこんなにも多くでるのだろうか。少しでも不良があれば全てロットアウト。見方を変えれば、資源の無駄づかいに繋がる。
 アジアや他の地域は、この価格ならばこの品質という基準があるが、日本は価格が同様でも常に上の品質を自らに要求する。では本当にそこまで高い品質が必要あるのか。原材料高の時代にコストが高いから競争力も出てこない。原点に戻って見直す必要があるのではないか。
 今のままでは日本の競争力がどんどん落ちてしまう。更に高い品質のものを作っても、では利益は?となる。世界の製紙メーカーの利益率を見ると中国系が10%代後半なのに対し、日本メーカーの利益は?

 
栗原紙材・栗原正雄社長(2月27日)
2011-03-01
  輸出と国内価格の差が広がりはじめた古紙。栗原正雄?栗原紙材社長は段ボール古紙について「?3千円以上開くと状況は変わる」「ここ1年は輸出価格の方が高かった」として国内価格改正の可能性に言及した。古紙業界の現状も踏まえ話を聞いた(インタビュー1月21日)。


 ●昨年の古紙動向を振り返っていかがですか
 昨年は09年の回収量2166万?から約1%増、20万?程度増えた。同様に消費量も約20万?増の1680万?。段ボール、白板など板紙の生産が若干伸びたことで微増となった。
 一方、古紙輸出量は前年比60万?減の430万?。ただし、09年の輸出量には08年末に輸出停止した際の繰り越し分60万?が含まれており、これを考慮するとほぼ同水準であった。輸出価格は昨春以降、ほぼ一貫して主要三品目で国内価格を上回っている。
 更にここに来て、価格差が広がっている。特に雑誌古紙が最も大きい。年初で?4千円(以下、価格は全て?当り)程度開きがある。新聞古紙も3千円近い。段ボール古紙も2千円程度。
 また、関東商組の輸出見積り価格は一都六県、共通である。極端に言えば、横浜の港の前で積むのと群馬県で積むのではドレー代は大きく異なる。その平均価格を出しているわけで、関東商組の価格と市中価格には開きがある。湾岸に近いヤードから出荷する場合、更に価格差は広がる。
 ●輸出価格が国内価格を上回ったことで、量の確保が難しい状況にある
 非常に仕入れ価格が強含みで推移している。回収業者からの仕入れ価格は高値を基準に設定されるので、現在は量的に2割程度の輸出価格が基準となっている。これによって直納問屋の経営は圧迫されている。
 例えば現在、新聞古紙の国内価格は1万5千円だが、仕入れ価格は平均1万2千円程度、激戦区では1万4千〜5千円。これでは国内はもちろん、輸出も利益が出ない状態だ。
 背景には代納業者の台頭がある。代納業者とは国内製紙メーカーへの直納権はないが、ベーラーを設備している大規模回収業者のことで、総合商社経由の輸出、直納問屋経由の国内製紙メーカーとチャンネルを2つ持っている。輸出価格が高ければ当然、総合商社経由に傾倒し、直納問屋には来にくくなる。逆に国内価格の方が高かった09年は2〜3割が輸出で7割程度が国内であったが、10年は年を通して輸出価格が高かったことから輸出に向かった。
 そうなると、仮に直納問屋が代納業者から取扱量1千?のうち、200?の新聞古紙を仕入れているとすると、その分が入ってこない可能性が生ずる。それでは製紙メーカーへの供給責任を果たせないということで、国内価格を上回る仕入れ価格を出してでも確保せざるを得ない。このように現在、代納業者経由の新聞古紙はほぼ赤字だろう。
 加えて、古紙回収量自体もピークの07年(2332万?)と比べ約1割、150万?程度減少したことも現在のタイトな状況を作り出している。段ボール古紙は基本的には輸出入の差で余剰だが、新聞古紙は国内だけ、雑誌古紙もほぼそうだ。新聞の発行量が減り、折り込みチラシは07年と比べ20%程度減少している。よって新聞古紙がもっともタイトで、新聞古紙の取り扱いが多ければ多いほど損失は大きい。
 ●昨年は全国で30カ所以上ヤードが増えました。代納業者の増設が要因ですか
 それも一つの要因。前述した通り、直納権がなくても輸出は可能で、産廃業者などが代納業社となり、ベーラーを設備して古紙の確保を図った。
 また、全体の古紙発生量が減少する中、各直納問屋が取扱量を減らさないために、ヤード増設で量確保に走ったことが大きい。当然、1ヤード辺りの扱い量は減るわけで、まさに「合成の誤謬」だ。明らかに仕入れの過当競争に陥っている。
 ●過当競争を防ぐには
 まずは業界内での協調体制を構築すること。実際、問屋同士が信頼関係を築いている地域ではそこまで仕入れ価格は高値ではない。一方、協調が取れていない地域では段ボール古紙でも1万3千円で購入している。これでは国内製紙メーカーに1万5千円で卸しては儲けが出ない。まだ体力があるからこのような対応も可能なのだろうが、限界に近い。
 もうひとつ、仕入れ価格の上昇と連動して、国内、輸出価格双方が同水準で上がること。仮に国内と輸出の価格が一致した場合、代納業者も輸出には回すことはないだろう。
 ただし、07年にも輸出価格に引っ張られるかたちで、一部?2万5千〜6千円まで国内価格は高騰した。当時、製紙メーカーはギリギリまで価格を抑制していたが、在庫が不足し、どうしようもなくなり輸出価格に近付いてきたわけで、現在のように長期的な準備はしていなかった。
 この経験を踏まえて、新聞ならばパルプ含有量を増やすなどして、古紙在庫を十分に確保するなど対策を講じており、輸出価格またはそれ以上の価格まで高騰することはないだろう。今後はあまりにも差が開いたら、ある程度は輸出価格に近づけることで調整するはずだ。
 ●今後の国内価格の見通しについて
 現在の価格差が、国内製紙メーカーが必要な量を確保できるギリギリのラインだろう。3千円以内であれば、直納問屋も我慢してメーカーに納めるが、4千円となると価格にして2割強違う。同一商品で1千?出荷した場合に400万円の差はあまりに大きい。よって3千円以上開いてきたら、国内製紙メーカーに入る量が極端に少なくなるだろう。既に4千円の差がある雑誌古紙の場合、相当入荷率は落ちているはずで、一部プレミアム価格も出ているようだ。
 ●段ボール古紙については
 段ボール古紙の価格差は2千円程度なので、現状、直納問屋から国内価格の修正を求める声は出ていないが、やはり3千円以上開いてくれば状況は変わる。
 また、段ボール古紙の国内価格1万5千円は、09年2月から変わっておらず既に2年経過した。当然、輸出価格の上昇に伴い、当時と比べ仕入れ価格は上がっている。09年からちょうど1年間は、輸出価格の方が安かったわけで、古紙問屋はある意味、面倒を見てもらったわけだが、逆に10年3月からの1年間は輸出価格の方が高かった。これでイーブンとの見方もあるだろう。
 ●今年も引き続き中国の古紙需要は旺盛ですか
 中国政府は今年、製紙メーカー各社に対し計3766万?もの古紙輸入を許可した。昨年の輸入枠2400万?よりも更に1300万?以上多い量だ。にわかに信じられない数字ではある。
 というのも、昨年の古紙輸入量は前年比で350万?減少しているし、パルプ輸入量も減少したが、紙の生産量は900万?増えた。では一体、何を原料にしたのか。国内古紙回収量を増やして補うしかないわけだが、1千万?以上回収量が増えないと計算が合わない。仮にそうならば、回収率が一挙に10%以上上がったことになる。国内の回収量が増えていることは自体は間違いないだろうが、統計がどの程度確かかということだ。
 仮に今年も古紙の国内回収量が1千万?増えたら必要ないわけだが、なぜ今年は1300万?も輸入枠を増やすのか。その辺りは不透明だが、輸入枠が大幅に拡大したことは事実。年内にリーマン・ショックのような事態が発生しない限り、古紙の需要は旺盛であると考えられる。
 
明昌・宮崎丹美社長(2011年1月7日)
2011-01-07
 アニロックスロール洗浄システムの販売や、洗浄サービスなどフレキソ印刷全般にわたり事業展開する明昌?。現在の取引先は、200工場を超えている。印刷現場を多角的に調査することで、現状に合った解決方法を提案している。宮?丹美社長は、メンテナンスの重要性について「手を掛けた分だけ確実に結果が出る、非常に明確な付加価値である」と強調する。各工場が抱く問題や現状、新型ロール等について宮?社長と宮?利男会長に聞いた。

 ●アニロックスロールの洗浄剤や装置、新型ロールの販売などフレキソ印刷全般にわたり事業展開しています
 当社の姿勢としては、先ず現場を確認することから始まり、現状を把握した上で、必要な提案をさせていただく。その場限りではなく、洗浄剤については洗った後も、必要とあれば講習会を開くなど、ノウハウや情報提供も行い、メンテナンスの重要性を説いて全国を回っている。取引先は、この2年ほどで200工場を超えた。
 ただ、一筋縄ではいかないことが多い。それぞれ使用する印刷機が違えば、オペレーターも皆違うので、現場に合った、取り組み易い解決方法を摸索する。当社は印版を手掛けていた時期もあり、フレキソ印刷全般を熟知しているつもりだ。各工場のニーズに沿った商品も紹介させていただいている。お客様とともに歩み、発展していきたいと考えている。
 ●アニロックスの汚れですが、工場間の差は大きいのですか
 メンテナンスを怠っていたり、関心が薄い工場に対しては、アニロックスの基本的なメカニズムから説明する。目視できない細かい網目の存在、目詰まりすることでインキが乗らなくなるという悪循環も、普段知らずに業務に携わっている方が意外と多い。測定器を用いて数値で示したり、顕微鏡で洗浄前と後を確認してもらうこともある。
 昨年は猛暑だったので、アニロックスとゴムロール間の摩擦で熱が生じ、煙が出た工場もあったほどだ。インキの粘度に注意するよう呼び掛けるなど、幅広い見地から多角的なアプローチをしている。
 ●啓蒙活動は行き届いていますか
 まだ軽視している工場はあるが、地道な活動を続けていくしかない。ある工場では、印刷物が明らかにでこぼこしており聞くと、水で洗浄しているという。目詰まりを起こし、インキの乗りが悪いため、9秒で刷り上げるところを14秒かけており、そのまま仕事を続けていた。
 そこで洗浄剤を使用すると、刷り上がりが見違えるほど改善された。また結果的にインキの使用量の低減にも繋がった。実感したオペレーターは、以後はむしろ積極的に取り組んで下さるので、とてもやり甲斐を感じている。
 ●多くの工場が抱える課題は
 大半は「色が乗らない」、特に「ベタが乗らない」という。段ボールも再生紙の含有量が増え、インキが染み過ぎてしまうことが主な原因と考えられるが、インキや印刷機、気候等もすべて総合的に影響しているため、やはり現場の確認が先決だ。
 中には、印刷機の中の水洗浄部分がインキで詰まって水が出ていなかっということもあった。「今まで一度も開けたことがなかった」と言っていたが、我々が主体的に動かなければ、ずっと見つからなかったかも知れない。
 ●貴社が発行する「明昌ニュース」でも、メンテナンスの重要性を説いています
 以前は、商品をお買い上げいただいたお客様のみを対象に配布していたが、好評につき現在ではホームページやブログに掲載して、どなたでも見られるようにした。休憩室の目立つ場所に貼られている工場もあり、当社の励みにもなっている。常に分かり易さを心掛けているが、当社会長が持つ深い知識と知恵から、製造課長や主任など現場をチェックする立場の方々にも役立つ情報をお届けしているつもりだ。
 ●印刷は、段ボール箱の付加価値を高める役割も担っています
 各社のイメージカラーは、長年培ってきた財産である。例えば飲料メーカーであれば、みずみずしい生きた色を大切にしており、これを再現するのは当然で、勝手に崩すことは許されない。また近年では、一層デザイン性も高まっており、完遂がより重要視されている。
 そのためにもメンテナンスが絶対に必要だ。完全な再現ができれば、それは付加価値として認識され、?これだけ手をかけているのだから、これだけは請求させていただく?と、非常に明確となるのではないか。
 印刷とは1枚刷っても何万枚でも、同じ色でなければ意味がない。そして、ロスのゼロ化も重要だ。いくら印刷機が高速でも、これが守られていなければ信頼や付加価値にはならない。究極かつ普遍的なテーマだろう。
 ●海外と比較した日本のフレキソ印刷は
 欧州は、とにかくシビアだ。昨夏、日本国内で購入した土産を持参した際、同じメーカーで異なる大きさの紙袋が、すべて違う色であることに気付いた。現地の関係者に「欧州ではあり得ないことだ」と言われ、悔しい思いをした。インキや紙質が日本よりも不安定なためか、日本以上に意識が高いようだ。ドイツでは、印刷以前に紙の色からこだわっている。
 ●新製品のアニロックスロール「ユニコー」の販売状況は
 段ボールで6本、紙袋で10本、フィルムで4本納めた。ユニコーはインキの流動性に優れ、再現性が高く洗浄も容易なので、使い易く、小ロットに応じた早急な色替えが可能だと好評をいただいている。
 ベタ印刷ではインキの粘度を高めに設定するため、特に効果を発揮する。導入いただいた工場では、毎週行っていたブラッシング作業が不要になり、現在までの半年以上ずっと順調を保持。ブレードの減りが少なくなったという声もある。
 ●?フレキソ印刷とともに50年?の会長から見て、現在の段ボール印刷は
 10年前に比べても、インキや紙、印刷機はだいぶ変わった。より複雑化するフレキソ印刷において、メンテナンスの重要性は見直され、徐々に浸透してきた。現場はもとより、経営者の考え方も変わり、当社の出番も増えている。これからも長年のノウハウを活かし、徹底した問題解決を図っていく。
 
大王製紙・板紙営業本部(12月7日)
2010-12-03
 大王製紙は、2012年10月より、いわき大王製紙で新マシンを稼動する。東日本地区の供給体制強化が目的。中芯の供給能力を向上させるとともに、薄物ライナーへの対応力を高める。月産能力は2万5500?だが、同社では「需要動向を見ながら生産数量を考える」として、稼動当初は月数千?を見込んでいる。段ボール部門の拡充については「新工場建設の計画はない。強化は課題であるが、闇雲な量の拡大はしない」とした。板紙・段ボール事業部板紙営業本部に聞いた。

 ●延期していた、いわき大王製紙でのマシン新設を発表しました。このタイミングで新設を決定した理由を教えてください
 当社段ボール原紙は東日本1台、西日本2台の生産体制であり、全品種生産する中で、中芯の供給能力の向上を取引先から要請されており、当社の課題でした。
 需要が回復傾向にある現状、得意先に対する供給責任を果たすため中芯の供給能力を上げること、品質向上及び得意先から要望が増えつつある薄物対応も含めた品揃え充実のためマシン新設を決定しました。
 ●省エネルギー型とのことですが、新マシンの特長を教えてください
 2層抄きで薄物ライナーで競争力があるマシンとします。古紙処理設備においては最新の省エネルギー機器を採用し、電力原単位の低減を図ること、抄紙機では搾水性の高い設備導入により乾燥用蒸気原単位の削減を図ります。
 ●月産2万5500?の生産能力とのことですが、稼動後の生産計画について教えてください
 需要動向を見ながら生産数量は考えていきます。初年度は月数千?程度の生産で開始し、時間をかけて販売していきます。
 ●マシン新設によって、東日本地区での市況への影響を懸念する声も聞かれますが
 新マシンでは中芯だけでなくジュート、薄物ライナーも生産し、需要動向を見ながら販売実力に見合った生産を行なうことで市況には影響を与えず販売します。
 ●大手エンドユーザーの原紙共同購入や指定原紙の動きが広がっています。エンドユーザーへの販売については、今後どのようなスタンスで臨まれますか
 指定原紙化はエンドユーザーの意向によるもので、原紙購買の商流の一つ、との認識です。従って指定紙はエンドユーザーからの要請を聞き個別対応していく考えです。
 ●大手一貫メーカーでは、系列会社への自社原紙購入を促進する動きが見られます。貴社にとっても影響は少なくないと思いますが対応は
 需要が伸び悩む現状では、一貫メーカーが自社消費を上げていくのは間違いなく、当社が販売する先についても同様と考えます。そのため一貫メーカーへの販売が減少する分は他の販売先へシフトを進めます。
 当社グループではユーザーからの要請により自社の原紙を自社グループ内で加工し販売することは品質安定やトレーサビリティの観点から今後も増える、と予想しますが、無理に増やすことはしません。
 ●原紙市況をどのように見ていますか
 昨年4月の価格改定以降、原紙需要が回復傾向にあること、また原紙価格の大きな要素である段ボール古紙価格が上昇傾向にあることから、各原紙メーカーとも値下げ要請には対応せず安定している、と見ています。
 ●輸入紙についてどのように捉えていますか。
また、日本市場にとって将来的に中国の大手原紙メーカーが脅威になるとお考えですか
 現状輸入紙は昨年9月(1万6192?)をピークに減少しており、若干の変動はあってもこのまま数年は推移するのではないか、と考えます。現時点では国内のエンドユーザー及び段ボール会社から要求される品質は輸入紙では対応できないと見ていますが、将来的には脅威となると見ています。
 ●新マシン導入による生産能力アップを踏まえて、今後、貴グループの段ボール部門強化の方向性についてはいかがですか。最近、貴グループが関東地区で、大型工場を新設するのでは?との話も多く耳にします
 段ボール工場新設の計画はありません。板紙段ボール事業として、段ボール部門の強化は経営課題ではありますが、闇雲に量を拡大する考えはありません。
 ●現在、グループ段ボール会社は9社・13工場でシェア5%程度とのことですが、新マシン稼動以降、中長期的な観点から、工場数や貼合機の増設、能力アップについてどのように計画していますか。また、シェアはどの程度が理想的だとお考えですか
 現有設備の能力を最大限に引き出し収益向上させることが目的であるので、シェアをどこまで伸ばす、という考え方はありません。
 ●グループ・関東地区の段ボール会社は、現在フル稼動で、ボックスからの注文を受けきれない程との話があります。マシン新設に向けた量確保の一貫との見方もありますが
 関係はありません。
 
ボブストGジャパン・福井好子社長(10月17日)
2010-10-22
 4月に就任した福井好子ボブストグループジャパン代表取締役社長。ジャパンはもとより、グループでも初の女性社長だ。「細やかな配慮に加え、現実的、且つ冒険する所」。福井社長が分析する「女性らしさ」を発揮することで、アフターセールスの更なる強化を図る。機械販売では、新たなチャレンジとして「価格帯を含め、より柔軟性のある機械」を投入、ユーザー層を広げていく意向だ。

 ●社長就任から半年、いかがですか
 まだまだ期間も経っておらず、もう少し時間を使いながら、社長としての自覚を深める必要がある。前職はゼネラルマネージャーとして社長の補佐的な立場だったが、やはり代表となり責任の違いを感じている。
 私自身のバックグランドとして、ボブストグループではアフターセールスを一番の強みとしている。アフターをきちんと手掛けることは、単にビジネスに留まらず、お客様の満足度に直結する。堅実にやっていくことで結果的に継続したサイクルでのお付き合いに繋がっていく。業界的にも女性社長は少なく、グループ及びジャパンでは初めて。女性だからといって仕事に対しての甘えは許されないことは十分認識している。
 どのような形で「女性らしさ」が出せるかと考えた場合、細やかな配慮に加え、女性はある意味で現実的、且つ冒険する所がある。現実を直視しながらも冒険心を持ち、より積極的にアフターを強化していく。
 一方でアフターばかりで販売が薄くなるのでは、とのイメージを持たれるかもしれないが、決してそうではない。日本は成熟市場になって久しいが、ここに至るまで、業界全体で見た場合、営業色が非常に色濃かった。バランスを取るとの意味合いで捉えていただきたい。   
 ●アフターは必ずしも収益に直結しない部分もあります
 点で見た場合はそういう面もあるが、部品の販売、エンジニアの派遣など、総合的にみて採算が合ってきている。
 ●業界にはコアなボブストファンも多く、一様に「機械が壊れない」と評価しています。裏を返すとアフターを伸ばす難しさにも
 確かに壊れにくいが、年月とともに、性能は落ちていく。それを購入当初の状態に戻す努力は必要である。ギリギリまで我慢して、機械が停止した段階で呼んでいただいた場合、エンジニアの派遣や部品調達など柔軟に対応できないケースもあり、お客様のロスに繋がる。事前保全の重要性をご理解いただき、お客様自身に変化していただけるようにサポートすることは我々の使命である。
 グループでは欧州を中心にコンサルタント的なサービスも展開している。修理やトレーニングに留まらず、現場に立ち会い、機械の使用状況などを分析、その結果に基づきアドバイスを行うことで大幅な生産性向上に貢献している。これは日本のお客様が求めているサービスだろう。今後、日常の点検やトレーニングの重要性をご理解いただいた上で、次のステップとしてコンサルタントの領域にも進みたい。
 ●機械販売の現状は
 昨年は世界的にリーマン・ショックの影響が大きかったが、ジャパンでは08年比で売上はアップしており、競合他社と比較しても堅調である。要因は、08年末に発売した日本市場向け板紙用グルアー「アイガー」が好調であった点、板紙・段ボール双方で、より高い生産性、品質を求めるお客様から支持していただいた点が挙げられる。
 今年も、同様の傾向が継続している。そんな中、新たなチャレンジとして、段ボールでは価格帯も含め、より柔軟性のある機械を投入する。
 今秋のグループのオープンハウス「コンピテンス10」で、段ボール用自動平盤打抜機「エキスパートカット」を発表した(仕様別に最上位の「マスター」以下、「エキスパート」「ビジョン」「ノバ」と続く)。エキスパートは日本の市場に適した機械だと考えている。今春には「ビジョンカット」も発売した。現在の所、主に中国、東南アジア向けだが、見当補正機構「パワーレジスター」の搭載も可能で、いずれ日本でも紹介できるだろう。
 ●「エキスパート」クラスの機械が大手段メーカーで最も導入されています
 競合他社もかなり脅威に感じられるのではないか。エキスパートに相当する前機種の後継機がない時期がしばらく続いていたことは当社の弱点であった。価格面でも、競合他社に近い形で提供できるものと確信している。
 ●「ビジョン」も含めて、ボックスメーカーへの販売も視野に
 どの水準まですそ野を広げるかは模索する必要があるが、急激な形で拡大する意図は現時点ではない。当面、ボックスでも対象はユニークなメーカーに限定されるだろう。
 ●営業戦略は
 従来のトップダウン型の時代は過ぎつつある。オープンハウスなど、お客様に視察に来ていただくことや、マーケティング的なアプローチが重要だと認識している。
 例えば、今年の7月に富士段ボール様で「マスターカット」では初となるオープンハウスを開催させていただいた。今後も年数回は何らかの形でオープンハウスを行っていく。
 ここ数年は板紙分野が中心であったが、希望としては段ボールもやりたい。よりお客様に対し近くあるということは従来もやってきたが、段ボールに関しては強化する必要がある。
 日本でのオープンハウス自体は今月に現在のデモセンター(埼玉県本庄市)でもう一度、アイガーを展示する。その後も、日本での開催もしくは、上海コンピテンスセンターでの開催なども視野にいれながら、取り組みは継続していく。
 上海はアジアでの生産拠点に止まらず、展示・トレーニングも行っており、スイス本社のアジア版として構築している。今年は日本のお客様を上海のトレーニングセンターにお連れした。
 技術サポートについても、以前はスイスへの比重が高かったが、上海に移ってきている。スイス人スタッフも20名近く常駐し、彼らは日本にも頻繁に来ており、様々な交流が進んでいる。
 ●一般的に段ボールの営業は泥臭い面もある。貴社の場合、割とさらっとしているイメージであるが
 スイス国上場企業として、世界のビジネス倫理規定があり、様々な意味での泥臭さがどこまで許されるのかは厳しい。否定はしないが、フェアにという姿勢は変わらない。
 一方で、お客様へのご訪問回数を増やす必要はある。サービスエンジニアも含めて営業という精神を広めている。単に修理をして終わりではなく、次に繋がるような情報交換は必要だ。サービスユニットに、アフターサービスマネージャーのポジションも新たに設けた。営業だけではない、且つマーケティングだけではない、サービス的なアプローチを既に行っており、今後も強化していく。
 
富士ダンボール工業・本田展稔社長(9月27日)
2010-10-01
 地方有力ボックスメーカーの富士ダンボール工業?(本田展稔社長、香川県東かがわ市)は、無益な価格競争を徹底的に排除するとともに、「おもしろい」と言われる包装設計を「迅速に」提案することで顧客の信頼を得ている。3年前に発足した段ボール製工作キッド等を製造・販売する「Dプロジェクト」も順調に拡大、その開発力は、ケースユーザーの「期待感」にもつながっている。そんな同社では品質と生産性の更なる向上を目指すべく、再来年の新工場建設を決めた。本田社長に話を聞いた。

 ●昨年は不況の影響で段ボール生産も落ち込みました
 最も落ち込んだのが、重量物梱包用の3層段ボール。09年度は前年比23%弱減少。一般段ボールも同7%程度減少した。
 それが今期に入り、重量物梱包分野は前年比25%増と、ほぼリーマン・ショック以前の水準に回復。一般段ボールも、月によって上下動はあるが、一昨年の水準に回復し、更にプラスアルファになりつつある。ただ、需要そのものはまだ戻りきっていない。地道な自助努力が奏功した。
 ●自助努力とは
 当社は安く大量に販売するという発想を全く持っていない。営業スタッフには「発注の決定要因が、価格だけならば受注を断りなさい」と指示している。価格が決定要因では、将来的にユーザーになり得ない。如何に包装改善、作業改善等を提案できるかに主眼を置いている。
 また、段ボールに留まらず、包装関連資材・設備など、新規商材の販売も強化した。ただ、これは他社も取り組んでいること。それよりも如何に情報を持ち、包装設計能力を高めていけるかが重要となる。そして営業スタッフが本当にユーザーのことを思って努力しているかだ。
 提案して終わりでは駄目。結果を受けて、次はこうしようと諦めることなく努力し続けることが必要となる。それには営業をバックアップする設計、デザイン部隊の能力が大きい。
 営業の設計では限界があり、どうしても100種類程度の代表的な形式に留まってしまう。プラスアルファが必要。それが可能なレベルのスタッフが後方支援にいるかどうかだ。
 当社のキーワードは「おもしろい」だが、ユーザーが「おもしろい」と思う案を持って行こうと常々言っている。
 もう一つは「スピード」。当社にとってスピードは生産速度ではなく、依頼に対する返答スピード。「速さを付加価値に変えよう」と指示している。
 打率10割は無理だが、3割でも積み重なれば大きい。
 ●地域の価格動向は
 割と安定しているが、価格は常に上下動する。局地的には弱含んでいるようだ。シートは下がっていない。原紙が若干動いていると聞くのでもう少し下げていただいてもとは思うが。
 中長期的スパンで見ると、平均ケース売価と平均シート販売価格の差は、段々縮まっている。ケースは下落傾向だが、シートは動いておらず、現在は20円程度の差しかない。それが我々の置かれた環境である。
 ●段ボール製工作キット等を製造・販売する「Dプロジェクト」を設立し、3年が経過しました
 総売上の5%程度になった。子供向けに加えて若い女性をターゲットにした商品を販売するなど、ユーザー層を広げている。
 8月に大手百貨店の本店で、ショーウインドウを当社商品でディスプレイするなど大々的なキャンペーンを行っていただいた。大手雑貨量販店では、東京都内全店で販売している。また、大型遊具の展示を中心としたイベントも請け負っている。夏休みは特に盛況で、アルバイトを雇い対応した。
 現在は専従の設計、デザイン、営業担当による5名体制。営業は東京と地元を忙しく往来している。加えて同プロジェクトは、設計及び商品企画部門でもある。一般段ボールの包装設計も、本社の営業が同プロジェクトに委託する形だ。
 ●拡大路線で進みそうですね
 拡大を目指すが、それ程大きな市場ではない。ピークは現状の倍、売上の10%程度だろう。
 この分野は、既存商品を販売していれば未来永劫いけるかというと絶対に無理。新商品を出し続けられるかに懸っている。そこが一般段ボールと全く違う。初めて目にするから、「おもしろい」と思えるわけで、2度、3度手にしたらおもしろさはなくなる。「おもしろい」というキーワードが、どれ程危険かということだ。私も専従スタッフも全く安心していない。
 ●貴社にとって売上以上の効果があるのでは   
 設計・商品企画能力が、段ボールユーザーにも浸透し、当社に頼めば良案を出してくれるという期待につながっている。
 段ボールの使命として▽安全・確実に保護し、搬送▽作業性の改善▽商品の販売促進▽環境適性の良さ―が挙がるが、その内「安全・確実に―」は、段ボールメーカーである以上、皆さん一応達成している。
 ユーザーが当社に期待しているのは、それ以外の部分。「商品が売れるように付加価値を高めたい」、「作業性を改善したい」と相談があった時、確実に何かを提案する。これが価格以外の競争力につながる。
 もうひとつ、消費者は工作キットを一品、一品を購入するので、全品検品が必須である。一つでも不良があると、難しい問題に発展してしまう。よって、検品に対する意識が高まり、一般段ボールも含めて品質レベルは非常に向上している。
 ●急に始めようと思ってもなかなか難しい
 本気で取り組もうとすれば、10年はかかる。当社も、プロジェクト設立に10年以上要した。
 原価計算が確立されていなければ利益に結び付かない分野だ。工程別基準原価を積み上げる方法を採用している。一般段ボールでも同様の手法を取っている。
 ●一般段ボールの場合、競合他社と大きな価格差が生じてしまうのでは
 取り組み開始は20年前だが、当初は売価とのギャップが大き過ぎてうまくいかなかった。徐々に修正して、通常業務で採用できるようになるまで10年かかった。
 平均売価が上がったことに加え、利益が出ていると思っていた商品がそうでなかったり、逆に駄目だと思っていたものが良かったりと、交通整理ができた。注力すべき点が明確化し、利益率も向上した。
 もちろん市況も加味されるので、一概に安定するわけではない。対応策として、原価計算後、リスク等を加味して、社長決裁、営業責任者決裁など0から3にランク分けし、売価を決定している。
 ●Dプロジェクト以外で、今後、注力する点は
 パッケージの段ボール化に伴う新規市場の確立は大きい。特に緩衝材は、木材や石油製品からの変更が多く、注力している。
 以前はボックスの代表的な仕事といわれる、繊維や木工関連が当社でも多かったが、減少した。現在は電気部品など包装設計能力が問われる分野や、高度な品質管理が要求される薬品が伸びた。
 ただ、両分野とも今後ユーザー数が爆発的に増えはしない。シェアを上げるしかないが、既に高いレベルに達しており、今後はユーザーの成長に影響される所が大きい。また、新規といっても、当社の生産キャパではパンクしてしまう。
 ●工場新設や設備導入の計画は
 新工場の造成を8月から開始した。来年上旬に造成を終えて、再来年には工場を建設する予定だ。敷地面積は現在の倍程度。ただ、増産はあまり考えておらず、生産ラインは現状とほぼ同レベルを想定している。増産するとどうしても平均売価が下がってしまう。品質と生産性の向上、社員の作業環境改善が主な目的だ。
 設備は現状、比較的新しい機械が多く、基本的には既存ラインの移設だが、一部入れ替えを計画している。
 ●今後生き残っていくのに必要なことは
 如何に独自性を出せるか。特定の市場で、なければ困る存在になれるかだろう。そのためには他社に代わりのできないレベルの商品を供給する必要がある。価格競争になれば、大手には確実に負ける。生産コストというより資本力の問題だ。
 また、社員のモチベーションの平均値が高い企業が勝ち抜くだろう。造語だが、「自起自動型の社員になろう」と言っている。自分で思い付き、行動に起こしてほしい。言われてやるのでは満足感もないし、モチベーションも上がらない。
 それと「新しいことに挑戦して失敗した人の罪よりも、何もしなかった人の罪の方が重い」。挑戦せずに、前年から現状維持では、世の中が変化し、会社の置かれている環境が変わり、周囲の社員が伸びる中、相対的に後退しているのと同じだ。
 挑戦した結果、失敗しても叱責はしない。元の状態に戻せば良いだけだ。
 ●業界に対しては
 20年、30年前は段メーカーとボックスメーカーの住み分けができていた。ところが、生産機械の性能が向上したことで、段メーカーが小ロット分野にどんどん参入し、住み分けが難しくなった。それはやむを得ないとしても、今後どうするかだ。
 段メーカーが、「この市場は我々に任せてほしい。ただ、ボックスメーカーにはこの市場を任せたい」ということを暗黙の中でもできるようになれば理想的である。
 やはり秩序ある競争をしなければならない。これは業界が整備することではなく、各社が取り組むことだろう。世の中からボックスメーカーがなくなって困るのは段メーカーである。
??
 
特種東海製紙・三澤清利社長(9月7日)
2010-09-06
 特種東海ホールディングスから社名を変更、7月から新たなスタートを切った特種東海製紙?。三澤清利社長のリーダーシップの下、製品開発を積極的に展開し、他社との提携や海外進出、環境事業の強化など多角的に推し進めている。これまでに実施してきた特種製紙と東海パルプ両社のホールディング化・合併の経緯や効果、現在の課題等について聞いた。


 ●社名を変更しました。経緯と、その狙いは
 平成19年4月に特種製紙と東海パルプは特種東海ホールディングスを設立し、効率化を図るため、今年4月に両社は合併した。そして7月1日から正式に社名を「特種東海製紙」とした。
この3年間はリーマンショックをはじめ、目まぐるしい経済状況にあり、よりスピーディーな舵取りを実現するため、合理的で効率的な組織作りに注力してきた。
 リストラや生産設備の統合など、可能な限りのコストダウンはこれまで推し進めてきたつもりだが、さらなる打開策を講じなければ、これ以上の業績向上には限界があると感じている。それに加え、国内全体の市場も少子化等の影響で今後拡大が見込めないことなど、重い閉塞感が常にあり、これを払拭するためにも新たなスタートラインに立つべきだと思い社名も変更した。
 ●具体的な戦略は
 今後の方針として?開発?提携?海外展開?環境事業の推進を掲げ、すでに動き出している。「開発」は、これまでもリーディングカンパニーとしてノウハウを培ってきた特殊紙が中心となり、現在100以上のテーマに取り組んでいる。例えば、100万分の1?単位のカーボン繊維を紙に混ぜ込んだCNT(カーボンナノチューブ)ペーパーは、電磁波を反射・吸収する紙で、年内に発売を予定している。さらに、今後成長が見込まれる電気自動車や太陽光発電に使用する製品にも注力していく。これまでのノウハウは段ボール等の産業用紙や、家庭紙にも注いでいきたい。
 「提携」は、これまでフリーズしていた案件を再考し、思い切って進めていく。これには自社の独立が前提となるので、まずは特殊紙を武器に、対等な戦略的提携ができればと模索している。
 「海外展開」は、基本的にアジアがターゲット。特種東海製紙グループの売上高は800億円(経常利益は5%の40億円)だが、輸出量は全売上の6・5%を占める。アジア地域は今後さらに重要な市場となるだろう。当社の戦略としては、まず台湾を入口に、現地の製紙会社に技術注入することで、販売網を広げていく。台湾と中国には、提携している段ボールメーカーもあり、そこのネットワークもフル活用する。
 「環境事業の推進」は、今後最も注力していく事業のひとつで、事業推進センターの中に環境事業推進本部を新設し、将来的に環境事業が製紙事業と同等にまで格上げできるよう注力したい。また、南アルプスに7400万坪の社有林を持つが、管理には相当の手間と資金を要する。今後は国や市町村、他企業も参加する協議会を設け、協賛金を頂く代わりに自然環境やCO2排出量削減の権利を得られるようなサイクルを構築できないかと考案している。
 ●新社名はシンプルで、対外的にも認知され易い印象があります
 提携や海外進出などを視野に考えれば、解かり易さは当然重要。投資家にも目を向けてもらえるようなネーミングを考えた。とある総合商社の社長が、当社の特殊紙について「品質や性能は、海外でもすごく好評だが?ファンシーペーパー(ファンが欲しい紙という造語)?と言われても現地の人達には解かり辛いようだ。いっそ?フューチャーペーパー?にすればだいぶ印象が変わる」と言われ、名前の重要性に気付かされた。
 英語でなくとも、カタカナにすればより解かり易いかとも考えたが、100年以上の歴史ある東海パルプと、前身を含め90年以上の特種製紙の名は残すべきだと判断した。ロゴマークは特種と東海の頭文字「TT」となっているが、社員には「テクノロジー(技術)」と「トラスト(信頼)」の当て字、ダブルミーニングだとも話している。技術は特種製紙の原点であり、信頼は東海パルプの創業者である大倉氏が常に言っていた大切な言葉である。
 ●長い歴史の上に立っているのですね
 あるキッカケで調べたが、20年前、紙パルプ産業の一部上場企業は20社あった。その後、合併等もあり、今日では11社に減った。5年後には幾つになっているかと考えた時、我々はどうして今日までやって来られたのかと思い至った。そんな時に東海パルプの100年史を読んでいると、ひとつのキーワードが浮かんできた。それは「準備」だ。先輩達の知恵を大事に、新たな事業等にトライする際でも、幾つもシミュレーションを打ち立て柔軟な対応ができるように「準備」を怠らず、次世代へのバトンタッチができるよう精一杯努めていくつもりだ。
 ●紙パルプ産業全体の課題に、電子書籍など新メディアの登場が挙げられています
 この数年でペーパーレス化に一層拍車がかかってきている。一時的には相当大きな影響があるだろう。iPadに限らず、株券も電子化し、電子投票などIT化の流れはあまりに大きい。これに対峙し業界として、紙の魅力をPRすることも必要だが、私は対抗よりも共存の道を考える。過去の経験から考察すると、新製品の周りには必ず新たな紙の需要が生まれる。解かり易い例では、説明書や攻略本がそうだ。当社は今後とも恐れず侮らず、良い紙を研究、追求していく。
<<有限会社 日刊板紙段ボール新聞社>> 〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-11 湯島ハイタウンA-509号 TEL:03-5689-0121 FAX:03-5689-0120